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生命線のジャブを潰されてもV3!
井岡一翔、次の狙いはスーパー王者。
posted2016/07/21 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kyodo News
WBA世界フライ級チャンピオンの井岡一翔(井岡)が7月20日、エディオンアリーナ大阪でランキング6位の挑戦者、キービン・ララ(ニカラグア)を11回1分11秒TKOで下し、3度目の防衛を成功させた。序盤苦しみながらも、じわじわと挑戦者を削り、終盤にTKOを呼び込んでの勝利。まずはチャンピオンが11ラウンドにわたって描いたストーリーを振り返ろう。
序盤戦の井岡を見て「いまひとつ」と感じたファンは多かったのではないだろうか。生命線のジャブで試合を組み立てられず、距離をつぶされ、頭をつけて打ち合う時間帯が長く続いた。ララが非力だったことに助けられたが、パンチを被弾するシーンもしばしばあった。実際のところ、4回までの採点はジャッジ3人のうち2人が挑戦者の優勢としていたのだ。
「効いてはいないけど、やりながら自分でイラついていた。パンチが伸びてくるし、教科書通りではないというか、意外なところからパンチが飛んでくる。コンビネーションも『まだ続くのか』という感じでやりにくかった」
「打たせないで打つ」の理想とは違っても。
思い描いていたアウトボクシングを機能させることができず、格下と見られていた挑戦者に苦戦を強いられて苛立つ。自滅の二文字が忍び寄る状況において、井岡は冷静に自らの置かれた立場を認識し、ベストではなくともベターな一手を選択した。
「少々どつきあいになっても仕方ない。(普段口にしている)打たせないで打つボクシングと言っても、覚悟を決めないといけない場面がある」
覚悟を決めた井岡は中盤から左ボディブローを軸に、コツコツとていねいに挑戦者にダメージを与えていった。世界初挑戦の21歳、ララの抵抗は続いたが、焦ることなく、ラウンドを重ねるごとに本来のジャブで距離をキープするスタイルでボクシングを確立させていった。そして10回、ボディ攻撃からララに右を浴びせてダウンを奪うと、11回にフラフラとなったニカラグア人を追撃、最後はキャンバスに大の字になったララに10カウントを聞かせて試合を終わらせた。