ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
大仁田vs.船木の電流爆破マッチ実現。
“持たざる者”の知恵と勇気が交錯。
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byYukio Hiraku
posted2016/07/19 07:00
前哨戦で大仁田を締め落とす船木だが、大仁田にとっての“我が家”である電流爆破でどのような戦いを見せるのか。
MMAビジネスをスタートした先駆者・船木。
一方、船木は新日本からUWF、藤原組と、大仁田FMWの影響を一切受けることなく、格闘技路線へとひた走っていく。そして'93年にプロレスから完全なる格闘技へと踏み入れた初の団体、パンクラスを旗揚げ。その歴史は、先日、200回記念大会を迎えた総合格闘技の老舗にして最高峰であるUFCより2カ月長い、MMAの原点のひとつである。
今年、アメリカの『Yahoo! Sports』で「現代MMAを作り上げたリーダーベスト10」が発表され、UFCオーナーのロレンゾ・フェティータ、UFC代表デイナ・ホワイト、PRIDE元代表の榊原信行らとともに、船木と鈴木もパンクラスの創始者としてランクインした。他のベスト10選出者は全員プロモーターであり、選手を兼ねているのは船木と鈴木だけ。船木は、いま世界中に広がるMMAビジネスをスタートした先駆者でもあるのだ。
「すべてが真逆だからこそ、相通じる部分もある」
このように、まったく別の道を歩み、まったく逆のベクトルでマット界に大きな影響を与えてきた大仁田と船木。しかし船木は、「大仁田は自分とはすべてが逆」としながらも、「真逆だからこそ、相通じる部分もある」と言う。
「大仁田選手はFMWを旗揚げしたとき、全日本や新日本と同じことをやっても勝てないから、過激なデスマッチ、邪道路線にいったんだと思うんですよ。それはパンクラスを旗揚げした時の自分も同じです。同じUWF系である、前田(日明)さんのリングスや、髙田(延彦)さんのUインターと同じことをやっていたら勝てないから、完全な格闘技に針を振り切るしかなかった。そういう意味で、大仁田選手がやることを、理解できないこともないんです」
FMWのハードコアもパンクラスの格闘技も、“持たざる者”の知恵と勇気で生まれたものだったのだ。