松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
ショットもパットも決して“悪くない”。
全英で出遅れた松山英樹の「なぜ」。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2016/07/15 11:30
日本ツアーの登録問題、五輪出場と難題を1つずつ解決してきた松山英樹。自身のプレーに集中した時の快進撃がまた見たい。
不調の衝撃を抑えるためには、波を減らすこと?
そんな堂々巡りのような状態が、彼のここ最近のプレーぶりにも滲み出ているように思う。予選落ちを喫した全米オープンでは、スタート前の練習では好感触を得て「自信満々でスタートするのに、ラウンドが終わるころには(自信が)ほとんどないぐらいになっている」と弱気な言葉を残し、肩を落としながら去っていった。
スコアも調子も自信レベルも、高く上がれば上がるほど、落ちるときの衝撃は強まるものだ。衝撃を抑えるためには、何にせよ波を抑え、一様に、抑揚のないように――トゥルーンの初日、松山と彼のゴルフから伝わってきたものは、そんな空気だった。
松山の「なぜ」に応えられるのは松山だけ。
感情も言葉も、抑揚を抑えようとしているのだろうか。それがゴルフに反映されているのだろうか。いや、理想通りのゴルフがなかなかできていないフラストレーションが、彼を包む空気を変えているのだろうか。
松山自身、その答えがわからず模索しているのだと思う。ゴルフにエネルギーを取り戻し、自信を取り戻そうと必死なのだと思う。
全英2日目は悪天候の予報。天候が荒れれば荒れるほど他選手と入れ替わって巻き返せるチャンスも増えるというのが定説だが、松山は「意識してないです。どういう風が吹くかわからないので、明日になってみないとわからない」と出たとこ勝負で挑むつもりでいる。
生真面目に考えすぎて迷路にはまりかけているのだとすれば、自然のままに形成されたリンクスランドの上で、自然のもたらす風雨と戯れながら本能のおもむくままにゴルフをすると、道が開けるかもしれない。
松山のゴルフの「なぜ?」が答えられるのは、言うまでもなく松山だけだ。彼に尋ねて彼が「わからない」ことは、周囲にはわかりようがない。
雨降って地固まる。彼が模索している問いの答えを、雨が、風が、教えてくれたらいいのだけれど――今はそう願うばかりだ。