松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
ショットもパットも決して“悪くない”。
全英で出遅れた松山英樹の「なぜ」。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2016/07/15 11:30
日本ツアーの登録問題、五輪出場と難題を1つずつ解決してきた松山英樹。自身のプレーに集中した時の快進撃がまた見たい。
悪いところは見当たらない、しかし改善の手ごたえも。
それならばオーバーパーにしてしまった原因は、グリーンを狙ったアイアンショットにあったのか?
「悪くはないです」
それならば、問題はパット?
「悪くはないけど……入らない」
技術面は総じて「悪くはない」のなら、果たしてメンタル面はどうなのか?
「自信もないですし、でも全然ダメかと言えば、そうでもないし。フツウです」
取り立てて何が良いわけでも悪いわけでもないということは、調子は悪くはない?
「たぶん」
明日以降、何かが良くなったら、たとえばパットがもう少し入ったら、スコアを伸ばせそうな手ごたえや予感はあるのか?
「それもないです」
そんな質疑応答の行きつく先が、この日は見えずじまいになった。
生真面目さが言葉から抑揚を奪うのか。
言葉に抑揚がない。その様子は、絶不調ではないが絶好調でもない中で、どうも思うようにスコアが作れないでいる、このところの彼のゴルフの反映のように感じられた。
何を尋ねられても「わからない」と松山自身が首を捻ってしまう。そんな現象が見られるようになったのは、最近では5月のプレーヤーズ選手権からだ。
あの大会で松山は、予選2日間をエースパターとは全く異なるマレット型のパターで戦った。そして3日目はピン型のエースパターに戻したら、その日のベストスコアに次ぐ67をマークし、一気に2位へ浮上した。
そんな松山に米メディアは「なぜ3日目は急に良くなったのか?」と問いかけた。
「なぜ? わからないです。わかっていたら、もっといいプレーができているはず」
生真面目すぎるのだろうか。パターチェンジが好転の原因の100%ではないにせよ、「パターを変えたおかげですかね」と気楽に答えても良かったのだと思う。だが、常日頃から完璧を追求していく彼は、メディアの質問を真正面から受け止め、本当にパターのおかげなのかどうか、それだけのはずはないし、などと考え、結局「わからないです」になるのではないか。