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「あの試合のことなら2時間喋れる」
中村憲剛、EURO予想の答え合わせ。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/07/14 16:30
国際大会のイタリアは侮れない。今回もまた、その鉄則を欧州に知らしめるプレーぶりだった。
ブッフォンが流す涙に「もらい泣きした」憲剛。
ベルギー戦以外にも、今大会のイタリアの戦いぶりは憲剛の心に響いた。PK戦までもつれ込んだ準々決勝ドイツ戦で敗れた直後、主将ブッフォンが流す涙を見て「もらい泣きした」し、決勝トーナメント1回戦でスペインを破った試合では「スペイン好きの俺でも、途中からイタリアを応援しちゃった」。
では、なぜイタリアは、憲剛が優勝予想していたスペインを破ることができたのか。「覚悟」と「走力」がキーワードだったと、憲剛は語る。
「イタリアは、とにかくスペインのセンターバックであるセルヒオ・ラモスとピケにボールを持たせないことを狙っていました。2トップのペッレとエデルが前線から激しくプレッシャーをかける。サイドバックのフアンフランとジョルディ・アルバに対しては、ウイングバックのフロレンツィとデシーリオが前に出て圧力をかける。GKのデヘアにバックパスさせて、ロングボールを蹴らせる狙いです。
ただしこの守り方の場合、後ろはスペインの3トップに対して3バックが数的同数で守ることになる。リスクはありますけど、スペインにはバルセロナのMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)ほどの強力なアタッカーはいませんから、ユベントスの3バックで守りきれるという算段でしょう。オールコートマンツーマンに近い守り方ですから、『覚悟』と『走力』が必要になりますけど、イタリアは見事にやりきった」
スペインを押さえ込んだイタリアのハイプレス。
イタリアのハイプレスは奏功し、特に前半はスペインのシュートをわずか2本に抑え、ボール支配率もイタリア47%、スペイン53%と拮抗した。これだけの積極的な守備をこなしつつ、33分にはキエッリーニが、終了間際にはペッレが決めて、2-0で完勝した。
「結局、スペインに対してゾーンで、後ろに人が余るような守り方では、パスワークを封じきれないんです。ゾーンの間でパスを受けられてしまうから。イタリアはフルコートマンツーマンをこなした上で、ボールを奪ったらペッレに長いボールを入れて、すぐにエデル、ジャッケリーニ、パローロの3人がサポートに走る。
圧倒的な走力を武器に、セルヒオ・ラモスとピケ、ブスケッツに対して4対3で攻めることで、彼らに息をさせなかった。中央を封じようと、スペインのサイドバックが中に絞ったら、空いたサイドをうまく使ってクロスを入れていましたから」