松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
リオ五輪の辞退、日本ツアーの登録。
“懸案”が解決して松山英樹が復調?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/07/04 17:00
話すと集中力が乱れる選手も、黙ることでリズムを崩す選手もいる。松山英樹は、どうやら後者のようだ。
五輪に、日本ツアー、懸案事項がありすぎた。
自分と外界との関係性。自分をどこまで開き、周囲との距離感をどう保つか。それが自身の五感を研ぎ澄まし、ひいてはゴルフのパフォーマンスに影響を与えることに、彼はきっと気づいているはず。
それならば、何が松山を殻に閉じこもらせるほど追い込んでいたのだろうか。
このところ、彼には懸案事項がいろいろあった。ゴルフの出場辞退者が続出しているリオ五輪。松山は出場するのかしないのかが注目されていた。
さらに、日本ツアーのメンバーとしてリオ五輪に出てほしいという願いを込めて、日本ツアーは義務試合数(5試合)の撤廃と松山に科していたシード停止や罰金といった制裁を解除する方針を伝えたが、松山は当初、それが特例なのか普遍的な対応なのかで惑わされた。
それが特例ではないという説明を受け、「それなら日本ツアーにメンバー登録しようと思う」。これで懸案が1つ減った。
悪戯っ子みたいないつもの素顔を取り戻した。
最終ラウンド後は、リオ五輪に「出ません」と出場辞退をついに表明。ジカ熱や治安の悪化も不安だが「それよりも虫に刺されて腫れてプレーできないほうが良くない」と、虫刺されに過敏反応する自身の体質を考えての決断だと説明。それを口にするまでには、ずいぶん悩み、考え抜いたのだろう。
そうした諸々の胸のつかえが彼の不調の要因だったのか? 少し、すっきりした? そんなふうに真っ向から尋ねると、彼は必ず否定する。
「ラウンドに出れば、そんなこと考えてないし……。そんなことないし……」
けれど、懸案が1つ、また1つと減り、久しぶりにアンダーパーのスコアで回り、進藤大典キャディの36歳の誕生日に「おめでとう」の言葉をかけた最終日、ともに回った松村たちと一緒に撮った記念写真の中の松山は底抜けに明るい笑顔になっているではないか。
もうマイナス思考からは抜け出せた?
「どうなんですかねえ。予選落ちがないから4日目ができてアンダーで回れたけど、予選落ちがあったらどうだったのかな」
そう言いながらも、悪戯っ子みたいな顔で笑ういつもの素顔を取り戻した松山だからこそ、もう大丈夫。きっと大丈夫。
そう信じたくなるオハイオの昼下がりだった。