松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
リオ五輪の辞退、日本ツアーの登録。
“懸案”が解決して松山英樹が復調?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/07/04 17:00
話すと集中力が乱れる選手も、黙ることでリズムを崩す選手もいる。松山英樹は、どうやら後者のようだ。
ミスショットの後、アイアンを振り上げたが……。
あれは3日目の10番だった。フェアウエイからの第2打がひょろひょろと右に曲がり、グリーン右手前のバンカーへ飲み込まれた瞬間。松山は手にしていたアイアンを頭上に振りかざし、自分のゴルフバッグを渾身の力を込めて叩きそうになった。
「思いきり叩いちゃえ――」
ここだけの話、私は思わず心の中でそう叫んだ。胸のつかえに苦しみながら吐き出せそうで吐き出せず。そんな彼に「吐き出してしまえ」と言いたくなった。
しかし、松山は寸前で手を止めた。本能的な衝動のやり場を失い、受け止めきれず燃やし切れない不完全燃焼。このところの松山が苦悩し続けている病いは、これではないか。
4月のマスターズでは、いい準備ができ、いい状態でオーガスタ入りし、「今までで一番緊張した」と身震いしながら開幕を待ち、そして優勝が現実的に狙える位置で最終日を迎えた。だが、サンデーアフタヌーンは前半からスコアを落とし、7位に終わってメジャー初優勝の夢は遠のいた。
メモリアル、全米ではまさかの連続予選落ち。
5月のプレーヤーズ選手権では、最終日を最終組で世界ナンバー1のジェイソン・デイとともに回り、デイの堂々たる優勝を目の前で見せつけられながら松山自身はまたしても7位に甘んじた。次に挑んだ2014年に米ツアー初優勝を飾ったメモリアル・トーナメントでは周囲の予想に反して予選落ち。全米オープンでも予選落ち。その後に挑んだブリヂストン招待は、2日目と3日目に大きく崩れた。
「うまくいかないことばかり……。いつ良くなるか、教えてください」
欲求不満を発散できず、胸の中はずっとくすぶり続けている。松山は、そんな慢性かつストレス性の病いに苦しんでいた。