松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
リオ五輪の辞退、日本ツアーの登録。
“懸案”が解決して松山英樹が復調?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/07/04 17:00
話すと集中力が乱れる選手も、黙ることでリズムを崩す選手もいる。松山英樹は、どうやら後者のようだ。
殻に閉じこもり、会話が減るとゴルフが乱れる。
松山自身が気づいているのかどうかはわからないし、意識しているのかどうかもわからないが、彼は不調になると、ときどきラウンド中に自分の殻に閉じこもったような動きになる。同組の選手やキャディはもちろんのこと、自身のキャディとの会話も極端に減り、自分でヤーデージブックを見て距離を判断し、自分でバッグからクラブを抜き、すたすたと無言で歩く。
ラウンド中の周囲との適度な交流や会話、何より笑顔が減れば減るほど、松山のゴルフは乱れる傾向にあるようで、プレーヤーズ選手権の初日もそうだった。今大会の2日目、3日目もそうだった。
しかし、最終日は朝の練習場から明るい笑顔。2番でバーディーを先行させると、5番あたりからは「どこ行った?」とボールの行方をキャディに尋ねる声がロープ外まで聞こえてくるようになった。
米ツアーでは珍しく、日本人どうし同組になった松村道央とそのキャディとも言葉を交わし、そんな明るいムードが松山のゴルフを盛り立てる助けになっていると思えた。
4歳ぐらいの男の子の声援に笑顔で応えた松山。
「10番のバーディーパットが入ったのが大きかった」
13番、16番でもバーディー。グリーンをやや外した17番。パーパットを捻じ込み、18番ティへ向かう途上、ロープ際に座っていた4歳ぐらいの白人の男の子が小声で「ナイスパット!」と声をかけた。
前日まで殻の中にすっぽり入ってしまっていた松山が、そんな幼子の小さな声を聞き取り、目を丸くしながらうれしそうに「サンキュー!」とにっこり頷いた。
最終日は67で回り、笑顔を取り戻した。「しばらくアンダーが出なかったけど、1回でもアンダーが出たので気持ち的に楽になった。晴れやかな気持ちで全英に行ける」