球体とリズムBACK NUMBER
ビルモッツ、コンテの両監督に注目!
EUROでのベルギー、イタリアの実態。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2016/06/25 11:30
イタリアに完敗した後、アイルランド、スウェーデンと戦術を進化させながら連勝したビルモッツ監督。
ベルギーに立ちはだかる古豪ハンガリー。
黒星スタートの後、2連勝して2位通過すると、「3試合で勝ち点6は非常に良い数字だ」とビルモッツ監督は自信満々。そして今後の行程にも恵まれた。
列強国が軒並み逆の山に振り分けられたトーナメント表を見て、彼は楽観的な姿勢を強めているかもしれない。しかしラウンド16の相手、ハンガリーは今大会に新鮮な驚きを提供している好チームだ。
アダム・ナジュやラスロ・クラインハイスラーといった楽しみな若手を擁する古豪は、清々しいパフォーマンスでオーストリアを蹴落とし、ポルトガルとは壮絶な打ち合いを演じた。もっとも、ベルギーの選手たちに気の緩みはなく、アザールは「タフな相手だ。勝ち上がるには最高の試合をするしかない」と話している。彼らが能力に見合った結果を得るために、指揮官にも同じ姿勢で臨んでもらいたい。
アズーリを率いる恐るべき情熱と冷静の人・コンテ監督。
一方、アズーリを率いる指揮官アントニオ・コンテは、ベルギー戦の勝利の後も「2年前のW杯でも初戦のイングランド戦には好結果を残した(が、グループステージで敗退した)」と兜の緒を締めた。
現役時代はユベントスでセリエAを5度制し、チャンピオンズリーグでも優勝しているにもかかわらず、「自分に大きな才能が備わっていると思ったことは一度もない」と言い、「監督とは学び続けなければならない職業だ」と話す謙虚な男である。
強靭なパーソナリティーと卓越した統率力を備え、常に勝利を追い求める完璧主義者。タッチライン際で大声を張り上げる熱いハートと、冷静に戦況を見極める明晰な頭脳を併せ持ち、豊かな戦術の引き出しとそれを浸透させる確かな手腕も誇る。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙に勤める友人に言わせると、「戦術を叩き込むためなら、選手たちに同じ動きを100万回でもやらせる」そうだ(イタリア人らしい大げさな表現だ)。マラソンはスタートラインに立った時に勝負がついていると言われるが、あの高揚感に溢れるイタリア国歌をジャンルイジ・ブッフォンが熱唱していた時、あるいはアズーリの勝利は決まっていたのかもしれない。それほど、両チームに準備の差があったと思わせる試合内容だった。