濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
結婚とアスリートの微妙な関係。
復帰組・女子格闘家たちが、強い!
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakeshi Maruyama
posted2016/06/12 11:00
見事に腕十字で一本勝ちした石岡。試合後、格闘技界で先頭を走るRENAへ、挑戦状を叩きつけた。
「あの闘い方が石岡」というファンの気持が蘇る……。
テイクダウンから即座に腕を取り、ディフェンスされると逆の腕にしつこく絡みついてフィニッシュにもっていった。
試合後に石岡は「もうちょっとスマートに闘えればと思ってたんですけど」と苦笑していたが、本人も言うように、危険を顧みずに攻める「あの闘い方が石岡」なのは間違いない。そういう闘い方ができる選手だから、ファンは石岡を待ち続けたのだ。
連敗脱出をかけた試合に「思うところがありすぎた」と石岡は言う。思うように練習ができなかったという不安も抱えていた。「相変わらずメンタルが弱いんですよ」とも。ただし「技術は上がってると思います」。
それは、以前と比べて練習の質が変わったからだ。
結婚して、子どもができて、生活が変わった。
練習は「できる時にやらなきゃいけない」ものになった。
「昔みたいに体力のままに3部練、4部練をできる歳でもなくなってますし」。だが、そのことが、練習量に頼りきらない強さにつながったとも言える。
結婚を機に、より強く、たくましくなった選手たち。
あらゆる女子アスリートにとって(というよりすべての女性にとって)、結婚と出産は大きなテーマだろう。ただ、それは現役生活のゴールというわけではない。好きなことをやり続けるために家族の理解と協力が必要なのは、本来男子選手だって一緒のはずだ。
長野は格闘技への思いを新たにしてリングに戻ってきた。
石岡は以前とは質の違う強さを手に入れた。
大事なのは、彼女たちにとって格闘技がすでに人生の一部として切り離せないものになっていることだ。
まして今は、女子格闘家にも大きな目標がある。