濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
結婚とアスリートの微妙な関係。
復帰組・女子格闘家たちが、強い!
posted2016/06/12 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takeshi Maruyama
「ウチもだんだん役者が揃ってきたでしょ」
6月5日、女子MMAイベント『DEEP JEWELS』新宿FACE大会が終わると、佐伯繁代表は満足げな表情を見せた。
この大会では“復帰組”が大きなインパクトを残している。第5試合では、かつて“美しすぎる格闘家”として週刊誌のグラビアを飾ったこともある長野美香がグラップリング(打撃なし)マッチでおよそ2年半ぶりの復帰戦を行なった。
一昨年2月に引退、出産を経てリングに戻ってきた長野は、グラップリングでV.V Meiなどトップ選手にも一本勝ちしている向奈都美と対戦。判定負けを喫したものの、向の関節技をしぶとくしのいで判定に持ち込んだ。予想以上の健闘だったと言えるだろう。2ラウンドにはテイクダウンに成功、マウントポジションを奪ってもいる。
「試合ギリギリまで緊張してたんですけど、リングに上がったら楽しかったです」
そう試合を振り返った長野。子どもができてから、格闘技に対する心境にも変化があったと言う。
「リングに上がる楽しさが増したような気がします。あらためて、自分は格闘技が好きなんだなって思うようになりました」
腕ひしぎ十字固めで2年ぶり勝利を収めた石岡沙織。
ジムへは夫と息子の3人で通っている。練習中は「周りの人たちが子どもを見てくれてます」。
独身時代ほどには練習に時間を割けていないはずだが、だからこそ格闘技が自分にとってかけがえのないものであることに気づくことができたのだろう。今後はMMAの試合にも復帰したいそうだ。
長野とメインイベントで対戦したことがある石岡沙織も、一度はリングから離れた“復帰組”だ。やはり結婚し、子どもがいる。
カムバック後も試合間隔があくことが多かったが、今回は3月大会からの連続参戦。セミファイナルで新鋭・華DATEから腕ひしぎ十字固めで2年ぶりの勝利を収めた。