球道雑記BACK NUMBER
なぜ唐川侑己の輝きは消えたのか?
復活期すロッテのエース候補は今。
posted2016/06/06 16:20
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
涌井秀章でもない。石川歩でもない。
「幕張のエース」の座には、唐川侑己が座るべき。そう思っている。
通算3度の最多勝獲得で球界を代表する投手と、現在のパ・リーグ投手成績で防御率で“隠れ”1位であるロッテの投手2人を差し置いてそう言うのであるから、やや暴論であるかもしれない。
今季ここまで(6月5日現在)5試合に先発して1勝2敗。防御率5.14。とても称賛すべき数字ではない。それも重々承知。
今、唐川は「将来のエース」と呼ばれていたころの輝きを取り戻すため、必死にもがき、その一歩手前のところまで復調してきている。
その姿は昨年、復活を遂げた涌井秀章の、少し前の姿ともどこか被って見える。
言うなればこれはエールに近いかもしれない。
「無期限の再調整」の理由は数字だけではなかった。
昨年の唐川は、8月15日の京セラドーム(対オリックス戦)の先発を最後に一軍のマウンドから遠ざかっていた。千葉ロッテ・伊東勤監督から無期限の再調整を言い渡されたからである。
昨年の成績は12試合に先発して5勝4敗。
勝敗の部分だけでいえば勝ち数が1つ上回っているが、防御率はそれまでのプロ8年間でワーストの6.32だった。
「無期限の再調整」を言い渡されたのには、数字の他にもう1つ理由があった。
それは自身が追い求める投球スタイルと、自身の身体能力の間で徐々に生じた“ズレ”とでも呼ぶべきものだった。
唐川はプロ入り以来、「いかに相手打者の近いところでボールを放せるか」を追い求めてきた。目で見える球速よりも、相手打者にいかに速くボールを見せられるか。そこにこだわってきた。
バランスを保ち、流れるようにうねるフォームは美しささえ感じさせていた。
しかし、その美しいフォームこそが、彼にとって落とし穴になってしまったのだ。