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オリンピックとパラリンピックの溝。
水泳日本代表の壮行会で感じたこと。
posted2016/05/29 10:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
5月20日から22日まで、競泳のジャパンオープンが行なわれた。最終日の22日、すべての競技が終わったあとには、リオ五輪に向けた壮行会が行なわれた。
壮行会は、ロンドン五輪の年のジャパンオープンでも実施された。そのときとの変化を目の当たりにして感じたことがあったので、書いておきたい。
まず、何が変化したのか。ロンドン五輪のときには、ロンドンオリンピック壮行会と銘打ち、競泳、シンクロナイズドスイミング、飛び込みの選手たちが一堂に会した。
今回は、オリンピックだけでなくパラリンピックもあわせてのリオデジャネイロ壮行会として実施された。
それは、4年前からの変化だった。
ただし、競泳、シンクロナイズドスイミング、飛び込み、ロンドンでは出場権を逃して参加しなかった水球男子代表が全選手の参加だったのに対し、パラリンピックの水泳日本代表選手は、計19名のうち、成田真由美と木村敬一の2名のみの参加にとどまった。
2名以外の選手たちが、都合がつかなかったとも思えない。観客席には、他の代表選手たちの姿も見受けられたからだ。
佐藤真海が指摘した「そう言えば、やっていたっけ」。
この光景を見たときに、3年前のことを思い出した。2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催が決まった年だ。
招致活動に尽力したアスリートの1人に、佐藤真海がいた。佐藤がしばしば、口にしていた言葉がある。
「オリンピックとパラリンピックの垣根をなくしたい」
その後筆者は、佐藤が参加する対談の司会を務める機会を得た。そのとき、ロンドンパラリンピックの経験について彼女が語ったことが印象に残っている。
「ロンドンはすごく高揚感がありました。スタジアムも常に満員。純粋にスポーツを楽しみに来た観客で一杯だったんです」
さらに、日本のパラリンピックの現状についてこう続けた。
「正直なところ、『そう言えば、やっていたっけ』という程度の感覚だと思うんです」
理解が広がらない理由については、「障害者スポーツに触れる機会が、あまりに少ないからではないでしょうか」と指摘していた。
彼女の競技生活、そしてロンドンでみた光景が、「垣根をなくしたい」という言葉に集約されていたのだろう。