“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小中高プロ、そしてU-19代表でも――。
和田昌士と遠藤渓太は「最高の2人」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/05/23 17:45
遠藤渓太は今大会ノーゴールだったが積極的な攻撃参加で存在感を見せた。横浜F・マリノスでも5月7日にプロA契約を締結。今後に期待だ。
ゴール前、絶妙なタイミングでの飛び出し。
ブラジル戦でスタメン出場した和田は、自分の思いをプレーで表現した。ツートップの一角としてプレーをした彼は、0-0で迎えた35分、DF野田裕喜(G大阪)のロングパスにFW中村駿太(柏)が反応した瞬間、「相手がボールに食いついていたので、こぼれたらチャンスが来ると思った」と、中村のサポートに走る。
こぼれてきたボールを素早く拾って突破を仕掛けると、たまらず相手がファールを犯し、PKを獲得。このPKをMF伊藤涼太郎(浦和)が決めて先制し、迎えた39分。カウンターからMF神谷優太(湘南)が出したパスを、左サイドの伊藤が受ける。伊藤がドリブルを始めた瞬間、和田は絶妙なタイミングでゴール前のスペースに飛び出した。
「(伊藤)涼太郎から、平行に動き出した(中村)駿太にパスが出るなと思った。ブラジルは裏に抜けた選手への食いつきが速いので、一度視界から消えようと思った。駿太にパスが出た瞬間、DFが2人食いついたので、完全に裏にスペースができたのが分かった。後はオフサイドにならないようにタイミングを計って、飛び出した」
相手DFを置き去りにした和田に、中村からグラウンダーのクロスが届く。「クロスのスピードが速かったけど、足を伸ばしたらつま先に当たってくれた」と気迫のスライディングシュートを決め、ブラジルを突き放した。68分にMF高木彰人(G大阪)と交代でベンチに下がったが、和田は2点に絡む活躍を見せ、存在を示した。
「立場が入れ替わった」と周りに思われても。
「スタメンで試合に出ること自体が1カ月以上ぶりでした。ずっと試合がしたかったし、出たら必ず結果を残したかった。しかも相手はブラジル。焦ることなくチャンスが来ることを信じて準備をしてきたので、思い切ってできたと思います」
試合後、彼の口から出た「焦らない」という言葉。小学校からの幼なじみが先にチャンスを掴み、つい1年半前とは逆の立場になった自分に対し、ずっと言い聞かせてきた言葉だった。
「最初は悔しい気持ちはありました。周りの目も、同じユースで昇格してきて、渓太は試合に出ていて、僕は出ていない状況では、普通に考えたら、『立場が入れ替わった』と見るのは仕方がありません。もちろん、負けていられない気持ちはありますが、あくまでも『自分は自分』だし、『人は人』。自分の課題をもっと明確にして、どうやったら試合に出られるかを常に考えるようにしています」