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有村智恵、3年半ぶりに日本復帰へ。
熊本で被災してから、1カ月間の心。
posted2016/05/24 10:45
text by
南しずかShizuka Minami
photograph by
Shizuka Minami
5月15日、ノースカロライナ州で開催された米女子ゴルフ下部ツアー「シメトラクラシック」最終日、有村智恵は18番でパーパットを沈めると、グリーンを取り囲む観客約30人の声援に応えて、笑顔で手を振り、ホールアウトした。
お日様がポカポカと気持ち良く、のどかな雰囲気の中、この大会が有村にとって今季最後の米ツアーの試合だとは、誰も知る由がなかった。
そう、有村智恵は自身のブログで発表したように“日本復帰”を決断した。
「今までいろんな人から『日本に帰っておいで』と声をかけられたけど、アメリカで戦うことが楽しくて、帰りたいと思わなかったんです。でも、(地元である)熊本で地震が発生し、地元が大変な状態なのに『アメリカに戻ってゴルフしていいのかな』と迷いが出てきてしまって。アメリカで思いっきりやれていたのは、日本で暮らす家族が幸せで、何の心配もなかったからですから」
熊本地震で“直接”被災してしまった有村は……。
有村の実家は、最大震度7を観測した益城町に隣接する嘉島町にある。地震が発生した時、国内女子ツアー「KKT杯バンテリンレディス」に出場するため、有村は実家にいた。
幸いにも家族は無事だったが、ライフラインが止まってしまったため、被害のなかった知り合いの家で有村は1週間ほど、有村の家族は2週間ほど、約20名の近所の人たちとの共同避難生活を余儀なくされた。
有村は地元に留まっている間、何か自分にできることはないかと、近所の避難所に立ち寄って、色んな人たちと言葉を交わしてみた。そこで、避難所に一時的に身を寄せるおじいちゃんやおばあちゃんたちから、何度も、こう声をかけられたという――。
「あなたが試合してる姿が見たい」
その言葉は有村の心に響いた。
「地元のみんな、日本のファンの人たちが見にこれる距離にある大会、って改めて考えてみたら……」
有村が帰国を決めたのは、自然な流れだった。