熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER
湘南サポーターと激論交わした曹監督。
あの時、本当に伝えたかったこと。
text by
曹貴裁Cho Kwi-Jae
photograph byShonan Bellmare
posted2016/05/24 11:20
負けが込む時でも、選手を落ち着かせ、クラブ関係者に説明し、サポーターに誠実に対応する……「監督」とはチームにとって、精神の最後の砦である。
負けても負けても、自分たちのスタイルを貫いて。
我々は普段から、とにかくよく攻撃の練習をしている。ボールを持った時にどう崩していくかという練習を繰り返していて、今はその目標へ向けての成長過程の途中であり、選手はそこへ懸命にトライを続けているところだ。
その過程の中で、ミスが出てしまったり、パスがずれてしまったり、うまくいかず動き出せなかったりしていて、その結果、仙台さんに捻られてしまったのだ、と思っている。
それで勝てないわけだから、11人で守って少ないチャンスをものにして引き分けならOKという戦い方も必要だ、と言われればそうかもしれない。だけど僕はこの選手たちとこのサッカーで成長していく、と信じてやっている。それはものすごくハードルの高いことなのだけれども、それが最終的に選手にとってもクラブにとっても大きな喜びに変わっていくと本当に信じているのだ。
そういうことを昨日、あのゴール裏で話したかった。
短い時間で、あの空気で、なかなか理路整然とは話すことができなかったが、そういうことを伝えたかった。
僕はこのチームを良くするために、手前味噌だけど責任をもってやっているつもりだし、このチームと選手を少しでも良くしていくことは絶対の義務だと思っている。僕も選手たちを精一杯成長させるつもりなので、だからこそ熱心なサポーターの皆さんにも選手を支えてあげてほしいと願っている。もしチームの戦いに思うところがあれば、そのブーイングは僕一人に向けられるべきだと思っている。
クラブに携わる全ての人間が考える「湘南スタイル」。
クラブも現場に対して、今の有り様の中でもちろん足りないところはあるけれど、協力体制を取ってくれている。だからクラブにかかわる人間は、誰一人として指をくわえて何の努力もしないまま試合に臨んでいるなんてことは有り得ない。
その一方で、僕らが努力したからといって簡単に物事が好転するほどJ1での戦いは甘くはない。そのプロセスの中で勝ったから、負けたからといって、その度に自分たちの目指すものへの歩みを止めるわけにもいかない。
もちろん監督として、勝てていないことはサポーターの皆さんに本当に申し訳ないと思っている。
何より、選手は皆さんと勝利を共に喜びたいと本当に思っている。
今は難しいことにチャレンジしている中で、それは去年、一昨年とやってきたこととも違っていて、10年20年の歴史の中でこそ達成できることの一部だと思っている。その土台を、今年のメンバーで作っていこうとしている段階。クラブに携わる全ての人間が、このサッカーを続けたい、続けていこうと思っていることは自明の事実だから、なんとしてでも僕はそれを大事にしていきたい。