プレミアリーグの時間BACK NUMBER
今季プレミアの“サプライズ11”は?
FWには岡崎慎司、相棒はマンUの18歳。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/05/22 11:00
レスターが優勝した今季のプレミアはサプライズに満ちていた。岡崎慎司は、その中心的な存在の1人である。
GKは降格候補を救ったワトフォードのゴメス。
本イレブンの最後尾には、一般常識を覆した感のあるワトフォードからエウレリョ・ゴメス。頻繁な監督交代と過度の新戦力獲得はチームを不安定にする「失敗のレシピ」と言われる。ワトフォードは昨夏に3年間で5度目の監督交替を行い、プレミア昇格を実現したスラビサ・ヨカノビッチの後任監督に、プレミア初体験のキケ・サンチェス・フローレスを迎え、選手も大量16名を獲得していた。
にもかかわらず堂々の9位で後半戦に突入し、約1カ月を残した4月半ばのウェストブロムウィッチ戦(1-0)で、勝ち点を安全圏到達の目安とされる40ポイント台に乗せている。その試合でゴメスはPK2本を止めて勝利の立役者となった。ちなみに、イタリア人オーナー以下のクラブ経営陣は、FAカップでベスト4入りまで実現したフローレスに、最終節を待たず「今季限り」を告げる相変わらずの姿を見せている。
番外編、オーナーには元・専制君主のあの人。
最後に、意外な変化を窺わせたオーナーを「サプライズ11」の元締めとして挙げておこう。チェルシーを牛耳るロマン・アブラモビッチだ。
「暴君」とも呼ばれるロシア人富豪にすれば、昨年12月半ばのジョゼ・モウリーニョ解任でさえ我慢したと言える。結果的に10位で今季を終えることになるチームは、既にリーグ戦9敗の16位に低迷していたのだ。
そして、最終節4日前のジョン・テリーに対する新1年契約提示。35歳のCBは、故障と出場停止処分で不動のスタメンではなくなっていた上、試合後のTVインタビューでクラブから通算3度目の新契約提示がない旨を明かし、この行動をフロントへの挑戦と見る向きもあった。
クラブによる土壇場の契約提示は、ホームでの最終節でテリー残留を求める抗議が予想されたファンをなだめ、年俸もレギュラーとしての地位も激減と推測される内容をテリーが嫌えば、当人の判断として高齢の高給取りを処分できるとの狙いがあるとも考えられた。
30代に容赦のないオーナーならば、今季最後のホームゲーム後にキャプテンとしてマイクを握ったテリーの「自分は残りたい」という発言を、ファンを味方につけて提示条件改善を迫ったと受け取るのではないかとも思われた。
ところが、最終節3日後の5月18日にはテリーの1年契約が成立。14歳から育成されたチェルシーで現役を終えたいとする本人の意思もさることながら、強豪としての過去10年間強のクラブ史で唯一人レギュラーを張ってきた生え抜きCBの価値を、ようやくオーナーも認めたと解釈できる。
僅かだが特筆すべきアブラモビッチの態度軟化は、12年前に情け無用で「専制君主」にチェルシーを追われて「ダメ監督」のイメージが強まったラニエリが、プレミア優勝監督に化けたシーズンに相応しい思いがけないエンディングだ。