松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

敗れた直後に勝者を祝福する難しさ。
松山英樹がデイの家族に見せた表情。 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2016/05/17 11:30

敗れた直後に勝者を祝福する難しさ。松山英樹がデイの家族に見せた表情。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

優勝を決めたデイに、息子がかけよる。祝福の意思を示した松山は、ゴルファーの鑑だった。

「今日は悪くても下をむかないように歩いた」

 そして同時に、彼がメンタル面の重要性や影響力を痛感し、「強くなろう」「強くあろう」と意識し始めたことの表われだったのではないだろうか。

「2日目は下を向いて歩きすぎたので、今日は悪くても下を向かないよう、がんばって歩いたつもり。そこだけは評価したい」

 悪くても、敗北を喫しても、胸を張り、上を向いて歩こう――その誓いを、松山は最後の最後まで守り抜いた。

 72ホール目。勝敗が決した18番グリーン上。松山はキャップを取り、祝福の握手をデイと交わした。

デイの妻と長女に、なんとも自然に祝福のハグを。

 3歳になったデイの長男ダッシュくんが父親めがけてグリーン上を走り寄った。ダッシュくんと入れ替わるように松山はグリーンを降りる方向へ歩き出した。だが、今度はデイの妻エリーが昨秋に生まれたばかりの長女ルーシーを抱いて松山の真正面からグリーンに上がってきた。

 大勢の人々が見守るグリーン上で、松山は両手を大きく広げ、エリーをハグして祝福した。彼がそんなふうにハグする姿を見たのは、私にとっては初めてだった。それはとても自然な動きで、彼はいつの間にこんなにアメリカナイズしていたのだろうかなんて、勝敗とは無関係に、そんなことに驚きさえ感じた。が、すぐさま我に返り、再び敗者の胸の内を思った。

 握手をしたり、ハグをしたり。あのとき松山は、そりゃあ悔しかったことだろう。けれど、その悔しさを噛み締めながら、それでも胸を張り、上を向いて歩き、勝者とその家族を祝福した彼の姿は、まさしくグッドルーザー。

 このサンデーアフタヌーンは必ずや松山の大きな糧になる。そうなることは、必然だ。

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