ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
壊れた右拳でKOを狙う余裕のV2。
井上尚弥、ロマゴン以外は問題外?
posted2016/05/09 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(大橋)が8日、有明コロシアムで2度目の防衛戦に臨み、ランキング1位の指名挑戦者、ダビド・カルモナ(メキシコ)に大差判定勝ちした。世界タイトルマッチ5戦目にして初の判定決着は、期待通りとはいかなかったが、またしてもこのチャンピオンの別格ぶりを印象付ける結果となった。
「みなさんの期待を見事に裏切ってすいませんでした!」
試合直後、井上がマイクを向けられて一番に口にしたセリフに、この試合の位置づけが凝縮されていた。井上尚弥には圧倒的な内容、度肝を抜くようなノックアウト勝利が求められていた。
続けざまに圧巻のKO劇を見せていたが……。
WBOスーパーフライ級王座を獲得した2014年暮れのオマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦、そして昨年末のワルリト・パレナス(フィリピン)との初防衛戦で、井上は圧巻のパフォーマンスを披露していた。
プエルトリコからはるばる来日したWBOのフランシスコ・バルカルセル会長は試合3日前、井上の将来について問うと、次のように口にした。
「イノウエはライジングスターだ。彼に勝てるボクサーがいるとすれば、ローマン“チョコラティート”ゴンサレスしかいない」
フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオらスーパースターの試合を目のあたりにしている統括団体のトップをして、井上の対抗馬には、パウンド・フォー・パウンド・ナンバーワン(全階級を通じて最も優れたボクサー)と評される45戦45勝38KOのゴンサレスを挙げるしかなかった。
そんな大きな期待が満たされる予感が、ゴングと同時に有明コロシアムを包んだ。
井上は躍動感あふれる動きでカルモナに迫り、いきなりワンツーを打ち込んだ。申し分のないスピードと、無慈悲なパワー。
今回の試合もあっという間に終わる。
そう感じさせる立ち上がりだった。