サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
キャプテン岡崎慎司の舞台裏に迫る。
実はハリルはエンターテイナー気質!?
posted2016/04/01 10:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Shigeki Yamamoto
「ああいうときは、“STAY”って言うんスよー。じゃあ、また!」
笑顔を浮かべた岡崎慎司は、そう言って片手をあげると、空港の保安検査場へと消えて行った。3月30日、シリア戦の翌朝。ロンドンへ向かう飛行機が出発する少し前のことだった。
冒頭の岡崎の発言は、シリア戦の試合前のコイントスで勝ったあと、陣地を変えないことをどのような表現で主審に伝えたのか、を説明したものだ。プレミアリーグと同じように、国際試合でも審判とのコミュニケーションは英語で行う。試合前のコイントスに立ち会うこともまた、キャプテンの大切な仕事の1つである――。
2010年5月30日のイングランド戦以来、長谷部誠がプレーしているときにはいつも彼の左腕にあったキャプテンマークが、約5年と10カ月の歳月を経て主のもとを離れた。
シリア戦の3日前だったのか、4日前だったのか。その記憶はあいまいだが、長谷部はヴァイッド・ハリルホジッチ監督との会話をはっきりと覚えている。
「今度の試合では、オカザキにキャプテンマークを巻いてもらおうと考えている」
もちろん、長谷部は快諾した。
試合の前日、今度は岡崎が呼ばれた。
「明日はお前にキャプテンマークをたくす。100試合出場のごほうびだ!」
長谷部は、自分の影響力を危惧していた。
実は長谷部は、ハリルホジッチ監督から話をされたときに、こう返している。
「そのまま、岡崎にキャプテンを任せたらいいんじゃないですか?」
これまでもハリルホジッチ監督は、チームとリーダーの関係について、こんな風に語ってきた。
「チームには何人かのリーダーが必要だ」
長谷部はその言葉に共感し、現状を危惧してこんな思いを吐露したこともあった。
「変な意味に聞こえるかもしれないけど、今のチームのなかでリーダーとしての(自分の)影響力が強くなり過ぎることを、良くないと思っている自分がいます」
もっとも、長谷部のキャプテン移譲の提案は「私の意図するところとは少し違う」と退けられている。ただ、「何人かのリーダー」の1人として、長谷部の頭の中にはエースストライカーに対する信頼があった。
“岡ちゃん”ならパーソナリティーも、プレーのクオリティも、キャプテンの資質は十分だ、と。