松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
ウッズからデイへの助言と松山英樹。
「自分の世界」を守るための方法は?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/03/22 18:00
ジェイソン・デイは「次代を担う選手」と名指しであげるほど松山を高く買っている。
ウッズから複数回届いた「同じメッセージ」の意味。
デイは、そのウッズから最終日の前夜も最終日の朝も、激励の携帯メッセージを受け取ったのだそうだ。
「夜も朝も同じメッセージだった。タイガーは意図的に同じメッセージを送ってきたんだと思う。『自分らしくあれ。自分の世界に居続けるんだ』というメッセージ。タイガーからの深い意味、いろんな意味が込められていると感じた」
開幕前から終始、デイが言い続けてきたことは「我慢して好機を待つ」だった。ウッズのメッセージになぞらえるなら、それが「デイらしくあること」。
そして最終日。4メートルのバーディーパットを着実に沈めた17番と、ティショットを大きく右に曲げながらも見事にパーセーブした18番がデイにとっての好機到来。18番でグリーン奥のバンカーからピン1メートルに寄せた第3打は圧巻だった。
「優勝争いのあの状況下で、あのバンカーショットを打つ能力が僕にはある。それを実証できたことは大きな自信になった」
後悔ではなく、挑んで敗れたまっすぐな悔しさ。
デイにとって好機到来となった18番は、松山にとっては4日間とも、ついに攻略し切れなかった鬼門となって終わった。
4日間ともティショットでフェアウエイをしっかり捉えておきながら、4日間ともセカンドショットが思い通りにならず、初日は池、2日目はグリーン右奥のバンカー、3日目はグリーン左手前のバンカー際のラフ。
初日はダブルボギーを喫し、2日目と3日目はうまくリカバリーしてパーを拾ったが、スコアがどうであれ、「あそこに打ってるようでは話にならない」と苦々しく振り返った。
だからこそ、最終日こそは18番で納得のいく締め括りをしてほしいと、そう願いながら松山のプレーを見守った。しかし、フェアウエイから打った第2打はグリーン右奥へこぼれた。そこからの第3打は寄せ切れず、1メートル半のパーパットはカップに蹴られてボギーフィニッシュ。5位だった順位は6位へ後退。悔しい終わり方になった。
ホールアウトした松山は険しい表情だった。けれど、彼が噛み締めていたのは、後悔とか、無念とか、そういう忸怩たる悔しさではなく、挑んで跳ね返されたというストレートな悔しさだった。
「最後は普通にパー狙いで2パットで5位以内でも良かったけど、そういうのは好きじゃない。あえて(安全な)左を狙うのは好きじゃない。あそこからパーセーブできなかったのは自分が悪いと思うし、順位も落としたけど、(ピンを狙っていったことが)悪いとは思ってない」