セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
本田圭佑の右サイドハーフは見納め?
FWの故障で好調の4-4-2に終了気配。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/03/14 18:30
周囲がざわついていても、フリーキックへの集中は切らさない。キッカーとはつまり、チームの信頼の証だ。
黄金時代を知るキャプテンと守護神が激怒。
ただし、チームの古参選手が試合後に語気を荒げたのは、この地方遠征連戦で勝ち点1しか取れなかった原因を、戦術面や偶発的要素よりも、“心の持ち様”に見出したからだ。
ゲームキャプテンを務めたDFアバーテが試合後に発した言葉は、チームメイトたちへの叱咤どころではなく、強い怒気を含んでいた。
「後半に見せたガムシャラな戦い方が、何で試合の最初からできなかったのか! 勝ちたいという強い意志や一つでも上の順位を獲るんだという野心……気持ちの問題だ。俺たちはむざむざ勝ち点を投げ捨てている」
ベテランGKアッビアーティも同調した。
「11人のうち1人でもちがう方向を向いていたら、結果はついてこない。ベルトラッチのシュートが決まっていれば、この試合には勝てていたかもしれない。それでも、この試合最初の30分のダメっぷりとサッスオーロ戦で犯した自分たちの過ちが消えることはないんだ」
右サイドハーフの10番は見納めか?
彼らの脳裏には、昨季終盤の大失速が甦っているはずだ。
前監督インザーギが率いた昨シーズンの末期、求心力を失ったチームは終盤の9試合でズルズルと4敗を喫し、10位という散々な成績で終えた。
'00年代の黄金時代を知るアバーテやアッビアーティにすれば、恥と屈辱に塗れた悪夢のような二桁順位だったろう。そして今のチームの大半のメンバーは頂点の栄光を知らない分、そこから転落した屈辱もわからない、それでは駄目だと憤っているのだ。彼らは少なくとも、ミランの名門としてのプライドを拠り所に全力を尽くしている。
つねに全力を尽くす本田だが、2列目右サイドハーフとしての10番は見納めになる可能性が高い。
シーズン終盤の戦術変更はリスクを伴うが、昨季の悪夢を繰り返さないためにも、もはや騙しだまし4-4-2を使い続ける状況にないことは明らかだ。
EL出場圏は死守する。次節のラツィオ戦では、ミランの新戦術と右ウイングへ戻った本田が見られるはずだ。