錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の強さは体力測定に出ない!
子供の才能は、どこを見ればいい?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/03/01 11:00
観客が「絶対無理!」と感じるボールを返してしまうのが錦織の凄さ。驚異の運動能力は、子供時代からの努力の賜物である。
錦織は、スカウトキャラバンで落選した過去が!!
ここでは選考方法や“発掘”された選手の特典など詳細に記す余裕がないが、簡単に説明すると、対象は小学生で、地方から全国大会に進んでくる約150人の中から最優秀選手に選ばれるのは4人で、優秀選手が10人。選ばれた選手たちには、同協会が実施するジュニア育成のサポートプログラムに参加できたり、メーカーから無償で用具の提供を受けたりといった特典がある。
しかしこのスカウトキャラバン、実はちょっと大っぴらには言いにくい歴史がある。
なんと錦織はこの選考テストで落選したというのだ。
山本さんは「錦織選手でも落ちるほどの厳しい選考基準ということです(笑)」と冗談まじりに強調したが、錦織を発掘できなかったのには理由がある。テストの選考方法は体力審査のみなのだ。
ちなみに項目は、50m走になわとび、立ち幅跳びのほか、テニスの動きに重要なスパイダー、8の字ランで、過去にはソフトボール(ハンドボール)投げなどもあり、その総合得点を争う。
テニスの技術ではなく体力で選ぶ理由は、いくらテニスが巧くて器用でも、運動神経が秀でていなければ将来性は乏しいという判断によるものと思われる。
しかし錦織の例が選考方法の落し穴を浮き彫りにしたのか、今では体力審査とは別にテニス審査も加わり、何人ものプロが見て才能ある選手を推薦しているそうだ。
「テニスでは100m走らないですしね(笑)」
それにしても、体力的には錦織はその程度でしかなかったということは実におもしろい。
錦織自身、以前、記者会見で「体力的に何が人よりすぐれているのか、たとえば100m走が速いとか」と聞かれたときにこう答えている。
「いや特にないですね……。テニスでは100m走らないですしね(笑)」
錦織を小さいときから高く買っていた松岡さんも、「確かに体力測定ではあまりいい成績ではなかった」と振り返る。