錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の強さは体力測定に出ない!
子供の才能は、どこを見ればいい?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/03/01 11:00
観客が「絶対無理!」と感じるボールを返してしまうのが錦織の凄さ。驚異の運動能力は、子供時代からの努力の賜物である。
松岡が若い選手で重視するのは「予測能力」。
未来のトップ選手を育てる『修造チャレンジ』で、錦織は小学生ながら中学生にまじって参加していたせいもあって体の小ささが際立ち、当時松岡さんの取り組みを取材していたテレビ関係者も「あんな子をどうしてそんなに一生懸命指導するんですか」と不思議がっていたという。
体力や体格は劣っても、すぐれたテニス感覚にメンタルの強さやしなやかさなど、松岡さんには錦織の将来性に確信があった。そして、テニス選手と足の速さの関係についてはこう話す。
「まず大切なのは予測能力ですよね。そこからの瞬発力、そして目的の位置までの数歩をいかにバランスを崩さず、効率良く動けるかということが重要です。僕なんか、100m走では中学3年のときに小学生の女の子に負けてましたよ。でもコートの中を走りまわらせたら速かった」
ボール投げも得意だったという。肩の強さは、ビッグサーブを武器に世界で戦った松岡さんのテニスにつながっている。
錦織が世界に誇る「スピード」という武器。
錦織の武器というと、トッププレーヤーは皆「スピード」だと言う。
ノバク・ジョコビッチもラファエル・ナダルも「ケイはツアーの中でもっとも速い選手の1人」と口を揃える。短距離走は特別速いわけではないのに。今さらな話かもしれないが、コートの中の動きが速いことと足が速いことは同義ではないのだ。
NHKでよく解説をしているナショナルコーチの増田健太郎さんは、「運動能力的なものでいうと、(錦織は)やはり瞬発力がすばらしい。また、吸収力がずば抜けていて教えたことはすぐにできてしまうので、アメリカに行ってすぐれた環境の下でフットワークがどんどん向上したのでしょう」と語る。