プロレスのじかんBACK NUMBER
崩れ落ちた飯伏幸太が怪しい復活。
「プロレス研究所」ってなんだ?
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/02/26 18:00
昨年のG1。棚橋をロープ越しにジャーマンで放り投げた飯伏。試合後、棚橋をして「飯伏がいればプロレス界は安泰なんじゃないですか」と言わしめた。
心身ともに壊れる予感と“失踪”の誘惑。
「精神修行でしたよ。精神を削られるだけ削られました」
2団体に同時所属していた2年半を、飯伏はそう振り返る。
疲労自体は1年も経たないうちから感じていたが、昨年1・4での中邑真輔戦では「あれ以上のクオリティを出す自信はもうないかも」と口にするほどの名勝負をやってのけ、3月には『NEW JAPAN CUP』に初出場をして初優勝を果たす。新日本でトップに立つために、着々と結果を出し始めていた。
だが、4月のAJスタイルズとのIWGPヘビー級選手権試合、夏の『G1 CLIMAX 25』で崩れ始める。試合はいずれも白熱するも、期待通りの結果がついてこなかった。さらにG1中、飯伏は心身ともに壊れてしまう予感がして、本気で“失踪”を考えた。さすがにそれはなんとか思いとどまったが、“失踪”に思いを巡らす時点ですでに壊れているともいえる。そして8月、飯伏幸太はついに崩落した……。
DDTと新日の頂上対決の直後、爆発した棚橋。
8月23日、DDTが両国国技館で『両国ピーターパン2015~DDTより愛をこめて~』を開催した。
DDTにとっては年間最大のビッグマッチ、当然、飯伏も出場をした。佐々木大輔と組んで、関本大介&岡林裕二の保持するKO-Dタッグ選手権への挑戦。予想通りの激戦の末、最後は飯伏がフェニックス・スプラッシュで関本を沈め、見事ベルトを奪取した。
「このタッグチームなら一生防衛できると思います」
そう言って、意気揚々と控室へと引き揚げた直後に、“事件”は起きた。
KO-Dタッグ選手権の次に行われたHARASHIMAvs.棚橋弘至戦。
“ドラマティック・ドリームマッチ”と銘打たれたこの一戦は、DDTのエース・HARASHIMAと、新日本のエース・棚橋の頂上対決だった。棚橋はG1を制覇した直後だったから、その勢いの波に乗ったままHARASHIMAを下してみせた。しかし試合後、その勝者・棚橋がバックステージで、突然怒りを爆発させた。
「俺は珍しく怒ってるよ。グラウンドで競おうとか、打撃で競おうとか、技で競おうとか。ナメたら駄目でしょ。これは悪い傾向にあるけど、全団体を横一列で見てもらったら困るんだよ!」