セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
欧州で最も守備が堅いのはユーベ?
ブッフォンも脱帽するDF陣の大奮闘。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/02/25 10:30
抜ければ1点のクロスをはじき出したボヌッチ。生粋のユベンティーノである。
セリエA最強の攻撃陣を誇るナポリとの頂上決戦。
深刻な戦力不足という非常事態にも、指揮官アッレグリはあくまでポーカーフェイスを崩さなかった。ニヒリストでリアリストの彼は、ナポリとの25節首位攻防戦を前に、これまで加えてきた守備戦術への細かな約束事をあらためて徹底させた。
しっかり引いて守る基本は3バックだが、相手の攻撃時にはサイドからエブラが1列下がり、4-4-2へ移行すること。
CK対策として、ニアポストに上背のあるFWを1人置いて、残りはDF全員とやはり高さのあるポグバを加えた5人でマンマークを敷くこと、などだ。
猛追撃してきたユーベと今季セリエA最強の攻撃陣を擁する首位ナポリとの天王山は、互いの攻守がゴール一歩手前で拮抗する、ハイレベルの好ゲームだった。
ユーベ守備陣は得点ランクを独走するFWイグアインを孤立させ、ナポリの4バックはFWディバラを封じ込めた。
スコアレスドローに終わるかと思われた88分、途中出場した伏兵FWザザの一発によって、ユーベは劇的な15連勝と逆転首位を得た。当然、MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)はザザだった。
その週最高のプレーに選ばれたボヌッチの爪先。
だが、ユベンティーノのみならず全国のカルチョ・ファンが“あれこそ真のビッグプレー!”と唸ったのは、DFボヌッチが前半に見せたプレーだった。
35分、ナポリDFヒサイがゴール前へ走るナポリFWイグアインへ目がけてクロスを放った。コースもタイミングも完璧、イグアインはボールを額へ当てるだけだった。
しかし彼の眼前1mで、ボールは弾き飛ばされた。
ナポリの先制ゴールのみならず、スクデット決定弾になるかもしれなかった決定機を打ち砕いたのは、追いついたボヌッチが懸命に高く伸ばした右足の爪先一つ分の執念だった。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、今季から「ラ・ペルラ・ローザ(=ピンク色の珠玉)賞」と題して節毎の“プレー・オブ・ザ・ウィーク”を選定している。ミランMF本田がジェノア戦で鮮烈なミドルシュートを見せた25節、同賞に選ばれたのはボヌッチのカットプレーだった。