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プラティニは罠にはまったのか……。
欧州に渦巻く陰謀とFIFA不正疑惑。
posted2016/02/19 10:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
REUTERS/AFLO
FIFA会長選挙が間近に迫ってきた。5人の候補者――サルマン・ビン・イブラヒム・アル・カリファAFC会長(FIFA副会長)、ジャンニ・インファンティーノUEFA事務局長、アリ・ビン・アル・フセインヨルダン協会会長、ジェローム・シャンパーニュ元FIFA副事務局長、トーキョー・セックスウェイル元南アフリカ居住環境大臣――が立候補しながら、具体的な政策論議やテレビ討論もないままに、2月26日にはチューリッヒにおける臨時総会で第9代FIFA会長が選出される。
昨年5月27日に発覚したFIFAスキャンダルは、前代未聞な数の逮捕者と想像を絶する巨額な不正資金の流れ(24年間で約185億円)を明らかにしながら、8カ月が過ぎた今もなお全体の構図が見えてはこない。そもそもゼップ・ブラッター会長(現在は資格停止)は、どうして5期目となる再選を果たした4日後に辞意を表明しなければならなかったのか? FIFAゲートとカタールゲート(2022年ワールドカップ開催国決定を巡る不正疑惑)との間には、どんな関連があるのか? FIFA本体も一連の犯罪に関与していたのか? そしてFIFAは、失われた信頼を回復して新しく生まれ変わることができるのか?
これからしばらく集中的にFIFAゲートを取り上げていく。第1回の今回は、「ミシェル・プラティニは罠に嵌ったのか?」。
処分撤回の提訴をするが、すでに有力候補の座は失った。
12月21日、FIFA倫理委員会は、ミシェル・プラティニUEFA会長(とゼップ・ブラッターFIFA会長)に、8年間の資格停止処分を科した。これによりすべての公的活動を禁止されたプラティニは、1月7日に次期会長選挙への立候補を断念したばかりか、UEFA会長でもいられなくなってしまったのだった。
ただ、プラティニは、スポーツ仲裁裁判所(TAS)に処分撤回の提訴をしている。これが認められれば資格は回復できるが、FIFAが次期会長の最有力候補――7月29日の立候補宣言の2日後には、FIFA加盟の209の協会のうち150以上がプラティニ支持を表明した――を失ったことには変わりない。
処分の理由は、2011年にFIFA(ブラッター)からプラティニに支払われた200万スイスフランが、正当とは認められなかったから。FIFAは内部規定により、処分そのものは発表しても、その理由の細部は明かさない。恐らくは、プラティニが同じ年におこなわれたFIFA会長選挙への立候補を見送った見返りと見なされたのだろう。