野球善哉BACK NUMBER
試合に出る日しか投げない調整法。
ヤクルトがブルペンの新常識を作る?
posted2016/02/15 10:50
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Nanae Suzuki
昨季、セ・リーグのペナントを制したヤクルトはトリプルスリーを達成した山田哲人や首位打者の川端慎吾、打点王の畠山和洋など打撃陣の貢献度が優勝の大きな要因になった。
とはいえ、バレンティンが本塁打日本記録を塗り替えたり、200安打を果たした青木宣親(マリナーズ)が好成績を残していたように、過去のヤクルトに打力がなかったわけではない。投手を含めたディフェンス力が昨季の覇権獲得に影響していることも忘れてはいけないだろう。
たとえばディフェンス面では、内野守備・走塁コーチの三木肇をリーダーにした抜本的な守備の見直しは、昨季のヤクルトにとって象徴的だった。たとえば、「ダブルプレー崩れで残ったランナーは失点に直結する」とチーム内で意思統一を図って取り組んだことは見事だったといえる。
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三木コーチの言葉から伝わってくるのは、常識にとらわれない考え方だ。当然、指揮官である真中満の大らかな采配があってのことだが、セオリー度外視の戦い方はセ・リーグの戦いにおいて度々効果を発揮した。
ランナー一塁で長打警戒一辺倒は正しいか。
走者一塁時における一、三塁手の守り方について、三木がこう力説していたことがある。
「ランナーが一塁にいるとき、一、三塁線を締めますよね。長打を警戒するというセオリーがあります。でも、あれも考えようによっては正しいんかな? と思うんです。長打にこだわって一、三塁線を締めようとしますけど、一塁に走者がいるわけですからセカンドとショートは二塁ベース寄りに守る。ということは、一二塁間と三遊間がめちゃくちゃ空く。ヒットゾーンを広くしていることにもなります。
これをやめて、一、三塁線を開けてヒットゾーンの角度を狭めるやり方もありなんちゃうかなって、セオリーから離れることによって見えてくるものがあると思うんです」
当然、賛否はあるだろう。しかし、何事も試してみないと新しい世界へ足を踏み出すことはできないのだ。
三木はヤクルト、日本ハムで選手としてプレーし、現役引退後は日本ハムで一、二軍のコーチを経験してきた。その中で、様々な場面における守り方を試しながら経験を蓄積してきたのである。