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イ・ボミはなぜこんなに愛される?
韓国取材でわかったその理由。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byAsami Enomoto
posted2016/01/12 11:00
2016年の目標を書いて欲しいと色紙を差し出すと、彼女は慣れない日本語で丁寧にこう書いた。
「もう優勝できないんじゃないかと思ったことも……」
一昨年に亡くなった父・ソクチュさんの願いだった賞金女王。年間7勝という無類の強さを見せて、父との約束を昨年果たすことができたが、そこに至るまでには人知れぬ苦難があった。昨シーズンは当初、上位には入るものの、なかなか優勝の機会に恵まれなかった。3月のアクサレディスゴルフトーナメントでは笠りつ子にプレーオフで敗れて2位。続く3大会でも2位に留まった。
「正直なところ、もう優勝できないんじゃないかなと思ったこともありました。亡くなったお父さんのことを思い出すことも多かったですし、元気をださなきゃいけないのに、帰りの車の中で涙ばかり出てくるんです」
ようやく1勝目をあげられたのは、5月になってから。ほけんの窓口レディースだった。
「試合前に行なわれるプロアマ戦で、大会スポンサーの社長さんと一緒に回ったんです。そのとき社長さんからかけられた一言で、一気に気持ちがスーッと楽になったんです」
愛称「スマイル・キャンディー」そのもの。
その一言の内容はNumber893号掲載の記事で読んでいただくとして、インタビュー後に行なわれた撮影でのイ・ボミの対応は、韓国でついた愛称「スマイル・キャンディー」そのものだった。12月下旬の韓国では最低気温が零下に及ぶ。そのため最初はビルの中で撮影をしていたのだが、突然、彼女からこう切り出した。
「外でも撮影しましょうよ。そのほうがいいんじゃないですか?」
そのまま外に出て、ちょうどカメラマンが「こちらに手を振って歩いてきてください」とお願いしたときだった。微笑みながら歩いていたイ・ボミが、ぴょんぴょんと飛び跳ねて大きく叫び始めた。
「お母さん!」
母のファジャさんが偶然、撮影していたところに通りかかったのだ。
「取材はうまくいきましたか? この後のファンクラブの忘年会にも是非いらしてくださいね」