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“100年続くイベント”を目指す――。
2015年に躍進したK-1と前田憲作。 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2015/12/20 10:30

“100年続くイベント”を目指す――。2015年に躍進したK-1と前田憲作。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

11月21日に代々木で開かれた「K-1WGP 2015」にて。卜部弘嵩の手を上げる前田プロデューサー。

世界最高レベルの“兄弟喧嘩”!?

 どちらかに少しでも遠慮が見えたら、観客のテンションは大きく落ちる。「やっぱり兄弟だからな。本気じゃやれないのか」で終わりだ。

 だが兄も弟も、いつも以上に攻めた。最後は兄の飛びヒザ蹴りで完全KO。テンションが落ちるどころか、年間ベストバウト級の王座移動となった。

 むしろ、その激しさは兄弟対決だからこそのものだった。

 功也は本来、世界最高レベルのテクニシャン。普段なら“いやらしく”相手を攻めていくはずだが、兄の強さ、怖さを知っているからパンチの連打でしゃにむにKOを狙い、そこに隙が生まれた。

 一方の弘嵩は試合前に右足を負傷。試合出場も危ぶまれるほどだったという。そんな状況でもタイ修行で磨いた右ミドルキックを繰り出し、逆転の飛びヒザにつなげたのは「K-1のタイトルマッチを棄権するわけにはいかない。まして弟には負けられない」という思いからだったはずだ。

選手もジムのスタッフもOBも……全員が泣いた。

 試合後、2人の師匠でもある前田は、プロデューサーとして王座認定証を読み上げながら、何度も涙で声を詰まらせた。

「弘嵩がケガで歩けなかったのも、功也が眠れなかったのも知ってましたから。仲がいい兄弟なのに練習時間も分けて、この試合に臨んだんですよ。周りを見たら(卜部兄弟が所属する)チームドラゴンのOBたちもみんな泣いてました」

 前田いわく「功也に勝てそうな選手は、世界中を見渡してもいない。唯一、勝てるのが弘嵩だったんです。逆に、チャンピオンになった弘嵩の試合は攻撃的だから危なっかしいところもある。王座戦線という意味では、来年はもっと面白くなるかもしれません」。

 2016年には-65kgと-60kgで日本トーナメント、世界トーナメントが開催される。「そこでまた新しいストーリーが生まれるはず」という前田だが、新生K-1はプロ選手だけのものではないという。

【次ページ】 新生K-1、ジムも9店舗まで拡大中!!

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前田憲作
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