濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“100年続くイベント”を目指す――。
2015年に躍進したK-1と前田憲作。
posted2015/12/20 10:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
2015年、最も躍進した日本の格闘技イベントは新生K-1だろう。
昨年11月にスタートすると、今年は代々木第二体育館でのビッグイベントを4度開催。いずれも好調な観客動員となった。タイトルが制定されたのは-55kg、-60kg、-65kg、-70kgの4階級。今年7月までにトーナメントでチャンピオンが決まると、11月の代々木大会では3階級のタイトルマッチが行なわれた。10月からはテレビ東京でのレギュラー番組『新K-1伝説』も始まっている。
プロデューサーを務める前田憲作は「最初は不安でした。やっぱりK-1という看板は大きいですから」と言う。
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新生K-1は、かつて大ブームとなったK-1とは別組織。巨漢の外国人が派手なKOを連発するヘビー級と、魔裟斗を中心とした70kgがメインだった旧K-1に対し、新生K-1は軽量級中心で4階級。かつてのヘビー級スター選手は出場していない。だが、観客はその新しさを支持した。前田はこう分析している。
「階級が増えて分かりにくくなったのではなく、各階級のトップ選手たちにファンがついてくれました。チャンピオンが別の階級のチャンピオンに“試合内容や盛り上がりで負けたくない”というライバル意識を抱いたのも、熱気の要因だったと思います」
「K-1でしか実現できない試合」とは?
そんな新生K-1で、記憶に残る試合を挙げていったらきりがない、とも前田は言う。劇的なKO決着だけでなく、トップ選手同士のシビアなサバイバル、紙一重の技巧の比べ合いもあった。
中でも「K-1でしか実現できない試合」だったのが、11月大会で行なわれた卜部弘嵩と卜部功也の兄弟対決だ。
両者は1月の-60kg初代王座決定トーナメント決勝で対戦。弟の功也が判定勝ちを収めたが、選手として以上に兄として納得できなかった弘嵩が再戦を要求。連勝で挑戦権を手にした。顔面を殴り合う競技で、兄弟が闘うのは異例中の異例。それを主催者が認めたのも、K-1王座の重みゆえだろう。
再戦が決まってからしばらくは眠れない日々が続いたという功也は言った。
「仕方ないです。K-1・60kgのベルトは1つしかないですから」