モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
ブラックボックスだった制御装置。
共通化で、MotoGPは相互監視時代に。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/12/19 10:30
バレンシアの公式テストで、ソフトウエアのセットアップに苦戦しつつも、ホンダのマルケスはトップタイムでテストを終えた。
FIMが発表した不正防止の方策。
先日、国際モーターサイクリズム連盟(FIM)が来季に向けて新しい技術規則を発表したが、その中に、こうした不正を防止しようとしていると思われる規則が追加された。それは、ホンダのCBR600RRのエンジンを採用するMoto2クラスのECUのデータを閲覧できるようになったことだ。
Moto3やMotoGPのようにメーカーの戦いになっているカテゴリーは、メーカー同士の相互監視が抑制の役割を果たしているのだろうが、共通エンジンと共通ECUを採用するMoto2クラスは、それが期待出来ない。ECUのちょっとした不正が大きなアドバンテージにつながるだけに、専門的な知識を持つ人たちの相互監視の場にしようというわけだ。
エンジンの基本設計が重要になる。
2ストロークエンジンから4ストロークエンジンになり、2輪のレースは、トラクションコントロールなど、さまざまな制御が出来る魔法のブラックボックスのECUの役割が非常に大きなものになった。まさに、レースの世界はECUの戦いとなっていたのだが、ECUを共通化することで今度は、不正防止という新しい問題も生まれることになった。
しかしECUの共通化をすることで、レース界は新しい時代を迎えることになる。つまり、独自のECUで出来た(ごまかせた)ことが、共通ECUではできなくなることが多くなるからだ。
その分、エンジンの基本設計の重要さが増すことは間違いなく、そういう意味では、エンジンそのものの善し悪しがパフォーマンスに大きく影響するという、エンジン開発という点では、原点復帰の時代を迎えることになるのかも知れない。