One story of the fieldBACK NUMBER
ルーキーの“危ないネタ”に笑う、
金本新監督の豪快なムードづくり。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKyodo News
posted2015/12/18 10:40
入団発表会見で金本監督を中心に写真に収まるルーキーたち。一番右の選手が“危ないネタ”で笑いをとった竹安。
「やんちゃ大歓迎。全然ウエルカムよ」
そこには、金本監督の存在がある。竹安発言の瞬間だれもがひな壇のど真ん中にいるボスをチラッと見たはずだ。すると、ボスは必死で笑いをこらえていた。これで、だれもが遠慮なく笑いに身をゆだねることができたのだろう。
入団発表を終えた後、金本監督はこの日のハイライトシーンについて、うれしそうに、こう振り返った。
「秀太がしこんどったね。いいこと。全然ウエルカムよ。やんちゃ大歓迎。まず、目に留まらないと」
『明るく、厳しく』
新監督のモットーだ。
組織を束ねる人、部下を持った人ならわかるはずだ。これがどれほど難しいか。その場にいるだけで場が張り詰めるような空気を纏えば、組織の膠着を生みかねない。自由なムードを優先させれば、上司と部下の緊張感を失う可能性がある。
金本監督は、この矛盾する、それでいて、組織に欠かせない2つの条件を自然体の中で成り立たせている。
例えば、だれかがスケジュールを勘違いして、チームの行事をすっぽかしたとする。きっと“アニキ”は豪快に笑って、釘を刺すはずだ。
『ワハハ! 勘違いなら仕方ないだろ。でも、次はやるなよ』
「金本さんだから、できたことだよ」
結果が出るシーズンはまだ先だ。よって、プロ野球監督としての実力は未知数。それでも「明朗」と「弛緩」、「誤認」と「怠慢」をしっかり区別するボスの存在によって、タイガースの空気は確実に変わりつつある。
例年より和やかなムードに包まれた入団発表の会場を出ようとした際、田中スカウトがいた。「しっかり担当選手を目立たせましたね」と水を向けてみた。
そうすると、この爆笑発言の核心をつく言葉が返ってきた。
「ハハハハッ、金本さんだもん。金本さんだから、できたことだよ」