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エディー・ジョーンズと
秘密のホワイトボード。 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

PROFILE

photograph byMutsumi Tabuchi

posted2015/12/10 12:15

エディー・ジョーンズと秘密のホワイトボード。<Number Web> photograph by Mutsumi Tabuchi

ジャパンのオフィスにて。次の東京W杯までの契約でイングランド代表初の外国人HCとなったエディー・ジョーンズ。

“南アフリカを最小化せよ”

「写真を撮ってもいいですか?」とエディーさんに尋ねると、「どうぞ、どうぞ。もう終わったからね」と答えてくれ、マーカーを持って即席講義をしてくれた。

「南アフリカの強みはラインアウトのプレー。そしてボールキャリーとブレイクダウン。タックルは高くて、ダメージを与えてくる感じ。じゃあ、日本はどう対抗するのか」

 ホワイトボードにはこんな言葉が書かれていた。

「minimize SA」

 南アフリカを最小化せよ。

 南アフリカはディフェンスを好み、ブレイクダウンで仕掛けてくる。だったら、ジャパンはそんなに攻める必要はない。

「相手が好きなことを、わざわざやる必要はないんです」

 2014年秋のプランが具現化され、それが奇跡を生んだのだ。

 歴史的な勝利は、このオフィスに源流をたどることが出来た。

「ケープタウンで待ってますよ」

 ホワイトボードの裏には、ジャパンの候補選手たちのネームプレートが、1本目(1軍)から3本目(3軍)、そして若手の選手たちの名前がずらりと並んでいた。

 もし、エディーさんが続投していれば、すでに4年後に向けてホワイトボードは書き換えられていたはずだ。

 しかし、時機、思惑、契約、交渉といった様々な要素がこんがらがって、エディーさんは日本を離れ、翌々日に南アフリカに旅立つことになっていた。

 オフィスは引っ越しの準備で、てんやわんや。

「東京の生活は楽しかった。料理は素晴らしく、サービスは行き届いている。でも、インドアの生活が多かったですね。南アフリカのケープタウンは自然にあふれている。私の人生にとってはいい変化をもたらしてくれるでしょう。ケープタウンで待っていますよ」

 しかしその2週間後、エディーさんはロンドンにいた。イングランド代表のヘッドコーチに就任することになったのだ。

【次ページ】 「2019年のW杯はすぐにやってきます」

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