箱根駅伝2016BACK NUMBER
箱根から世界へ。東京五輪までに
マラソンのメダリストは生まれるか?
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byShunsuke Mizukami
posted2015/12/15 10:30
村山紘太と鎧坂哲哉はデッドヒートを繰り広げ、2人とも従来の日本記録を上回るタイムに。勝った村山の27分29秒69は14年ぶりの記録更新となった。
村山も大迫も「ゆくゆくはマラソンを」。
大迫を指導した渡辺康幸(元早大)監督は「日本の将来を背負って立つ存在」と早くからその才能を見抜き、海外留学を後押し。在学中にチームを離れるのは箱根軽視と揶揄する声もあったが、選択が正しかったことはその後の活躍が物語っている。
村山も大迫も今のところはトラック種目を主戦場に置いているが、大迫は「ゆくゆくはマラソンを走りたい」と公言。高度な揺さぶりやハイペースなスパートに対応するためにも、まずはスピード強化に磨きをかける――アプローチとしては正攻法であろう。
箱根駅伝は年々スピード化が進み、「今後10年は破られない」と言われた2012年の東洋大の記録を今年、青山学院大があっさりと塗り替えた。
記録の推移を見ても、能力の高い選手が育ってきているのは間違いない。5000mと10000mで日本記録が生まれた背景に、近年の強豪校の練習、指導者と学生の熱のこもった邂逅があったと考えるのは穿った見方ではないだろう。
箱根ランナーからメダリストは生まれるか?
では近い将来、箱根を走った選手のなかからマラソンのメダリストは生まれるのか。
駒大の大八木弘明監督が興味深い話を聞かせてくれた。
「今、スピードのある選手は増えてきたけど、なかなか(マラソンに)行こうとしないでしょ。27分台が出てから行こうとするんじゃなくて、マラソンをやりながら27分台を出す感覚でやってほしい。22、3歳の選手がポンと殻を破ればね、またそれに続きますよ。瀬古さんや宗(兄弟)さんの時代、うちの藤田(敦史)や佐藤(敦之)らの時代がそうだったでしょ。」
スピードを磨きながら、同時にマラソンの経験も積んでいく。大迫らとはまた少し違う方法で世界に登りつめようとしているのだ。3月の「びわ湖毎日マラソン」には現3年生の大塚祥平が出場予定。「東京マラソン」には卒業生の村山謙太が、現役大学生として東洋大のエースである服部勇馬と青学大のエースである一色恭志もそれぞれ参加を表明している。
服部を指導する東洋大の酒井俊幸監督は「走らせるからには五輪代表を狙いたい」とリオ・オリンピック出場を視野に入れていることを明かし、「4年後の東京オリンピックには旬な年齢で臨める」とさらなる期待を込めた。
やや希望的な観測ではあるが、マラソンの日本記録(2002年に高岡寿成が記録した2時間6分16秒)が彼ら箱根のスター選手によって破られる日はそう遠くないだろう。
来るべき箱根駅伝では、エースランナーの、世界を見据えた走りに注目したい。