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「由規のコネ入団」と言われた貴規。
BCで急成長、来年もトライアウトへ。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2015/11/25 10:30
今季所属した福島では23盗塁、30本の二塁打を放つなど走力でも能力を示している。
課題と言われ続けたメンタルと守備面も改善。
その気概は持ち味である打撃の向上はもちろん、NPB時代から課題と言われ続けた守備の改善にも注がれた。
貴規と同じく'14年に日本ハムを戦力外となり、選手兼任コーチとして福島ホープスに入団した村田和哉に、練習から試合後を問わず徹底的に守備を鍛えられた。ノックはもちろん、塁間など様々な距離でのキャッチボールを丹念にこなした結果、スローイングは徐々に安定していった。貴規は福島ホープスに来て一番の変化を「気持ち」だと断言する。
「野球への想いというのが本当に変わりましたね。守備に関して言えば、ヤクルトにいたときはエラーとかしてしまうとずっと引きずってしまって、それがバッティングにも影響して沈んでしまうことも多かった。でも、村田さんにつきっきりで指導してもらったことで助けられたというか、自信を持てるようになりました。本当にメンタルは強くなったと思います」
「お前がNPBに戻ることが、俺たちの願いなんだよ」
貴規の取り組みは結果にも繋がった。
安打数はBCリーグトップの98本、打率も6位の3割2分6厘と、打撃で能力の高さを誇示した。守備にしても73試合で4失策と、レギュラークラスの外野手では少ないほうだ。チームとしても、前期こそ8勝25敗4分と「フューチャー・イースト」でダントツの最下位に終わったが、後期は20勝13敗3分と、参入1年目にして地区制覇。貴規は、「自分がチームを引っ張っていく」という自らの宣言に嘘をつかなかった。
もはや「育成枠だから結果なんて出せないでしょ」と嘲笑するチームメートは誰ひとりとしていない。それどころか、再びトライアウトに挑む貴規を全員が後押しした。
「いつも通りやって大丈夫だから。思いっきり暴れてこい!」
主将の笹平拓己がそうLINEで鼓舞すれば、今年のドラフト候補に挙がっていた岡下大将も力強い言葉で背中を押してくれたという。
「お前がNPBに戻ることが、俺たちの願いなんだよ」