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「由規のコネ入団」と言われた貴規。
BCで急成長、来年もトライアウトへ。
posted2015/11/25 10:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
1週間。
それは、合同トライアウトを受けた選手がNPBでの現役続行、あるいは復帰することが許されるか否かの審判の期間である、と言われている。
トライアウト参加者は一様に、この時期は落ち着かなくなるという。携帯電話を肌身離さず持ち歩き、着信があると瞬時に気持ちが昂ぶり液晶画面を確認する。それが友人などNPB関係者ではないとわかると、心配してくれているのだと感謝しつつも心のどこかで落胆してしまう。
元ヤクルトで、現在はBCリーグの福島ホープスでプレーする佐藤貴規も、そんな落ち着かない1週間を過ごしたことだろう。
トライアウトで最多の4安打も連絡はなく……。
もしかしたらNPBに戻れるのではないか――トライアウトでの貴規のパフォーマンスならば、それが十分に期待できた。
ウォーミングアップでは「緊張していますよ」と少し硬い表情を覗かせていたものの、第1打席に数球ファウルで粘ったことで肩の力が抜け、右中間へ痛烈な二塁打を放った。計7回打席に立ち、参加者最多の4安打。野手では誰よりもアピールに成功した。
「BCの最終戦から1カ月以上実戦から離れていましたし、NPBのピッチャーのボールだって見るのは久しぶりだったんですけど、最低限のことはできたと思っています。正直、手応えとしては半々ですけど信じて待つだけというか。育成でもなんでもいいんで、もう1回NPBに戻りたいです」
NPBで再びプレーできるのではないかという期待感と、「もし連絡がなかったら……」という不安感。双方の想いが1週間、貴規の脳裏でせめぎ合っていた。
しかし、NPBからの連絡はなかった。
その現実に貴規は、「すごく悔しい」とブログで綴っている。同時に、「野球を辞めようとは1度も思わなかった」とも自らの気持ちを述べていた。
ブログでの想いを補完するのなら、それは現在の熱意であり、以前は必ずしもそうではなかった。福島ホープスに入団するまでの貴規ならば、考えられない心境の変化なのだ。