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「由規のコネ入団」と言われた貴規。
BCで急成長、来年もトライアウトへ。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2015/11/25 10:30

「由規のコネ入団」と言われた貴規。BCで急成長、来年もトライアウトへ。<Number Web> photograph by Genki Taguchi

今季所属した福島では23盗塁、30本の二塁打を放つなど走力でも能力を示している。

「由規のコネで入団した」というネットでの陰口。

 2011年に育成枠でヤクルトに入団した当初の貴規には、当時ローテーション投手だったチームの先輩でもある兄・由規の影が常につきまとっていた。

「兄貴のコネで入団した」

 支配下選手ならまだしも、育成枠での入団である。インターネットなどで「コネ」、「由規の弟」という文言を見つけてしまう度に悔しさが沸き起こり、忸怩たる思いも抱いたという。

 もともと打撃には定評があった。プロ2年目の'12年と4年目の'14年には、二軍ながら打率3割をマーク。それでも4年間支配下登録されなかったのは守備、特にスローイングで大きな欠点があったからだった。

 捕球に関しては問題ない。しかし、ことボールを投げるとなるとまるで安定しない。「自分はスローイングがダメだ」と自覚すればするほど余計なエラーを重ねてしまう。その「投球恐怖症」は、支配下登録はおろか、戦力外となる大きな原因となってしまった。

 この時点で貴規は一度、野球に見切りをつけた。

「野球をやらないと申し訳がなくて」現役を続行。

 昨年のトライアウト。5打数1安打と結果は振るわなかったものの、「野球というスポーツを楽しめた」と晴れやかな表情で言い、自らの進退についても話してくれていた。

「ヤクルトに入ったときは『兄貴のコネ入団だ』とかネットなんかでいろいろ書かれて、本当なら見返してやりたかったけど、それ以上にプロは厳しい世界でした。戦力外という、今までの人生で一番の出来事を経験してもらいましたけど、野球を続けるのならNPBしか考えていないですね。これが最後の野球になったとしても悔いはないです」

 現役生活に別れを告げ、一般企業に就職しようと真剣に考えていたと、貴規は言う。しかし今年の2月、BCリーグに新規参入を果たした福島ホープスに入団したのだから、きっと彼のなかで野球を諦めきれていなかったのだろう。開幕直前にそんな質問をぶつけると、貴規は「そうなんですけど」と呟き、こう続けた。

「野球をやらないと申し訳がなくて」

 どこか自発性に欠ける言葉ではあるが、それには理由があった。

【次ページ】 右肩のリハビリに取り組む由規からの説得。

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