ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
三浦隆司、ラスベガスで壮絶に散る。
“第2のパッキャオ”へ向け、評価は不変。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byUSA TODAY SPORTS/AFLO
posted2015/11/24 11:30
実力者である両者が、まったく譲らず攻め合ったこの試合。「これぞボクシング!」という派手な展開となった。
2人が対峙し、真っ向勝負を挑んだ結果……。
バルガスは右ストレートを上下に打ち分け、常に先手を意識しながら三浦のアタックをしのいでいく。初回のダメージも残っているのだろう、三浦は圧力をかけて押し切ろうとするのだが、バルガスは屈しない。三浦の左を浴びて右眼はふさがりかけているが、無敗のメキシカンはやはり実力者だった。
両者の意地が激しくぶつかり合う中、三浦は8回終了間際、左ストレートを決めて勇敢なメキシカンをフラつかせた。いよいよクライマックスの到来か! 期待は最高潮に達し、そして思わぬ形で裏切られるのである。
試合を決めようと前に出た三浦に対し、バルガスも下がらずに真っ向勝負に出た。
炸裂したのはバルガスの右だった。
三浦のヒザがガクンと砕け、右フック、左フックと続けられると、踊るようにキャンバスに転がった。いったん立ち上がりかけた三浦だが、バランスを崩してキャンバスに頭から突っ込み、再び力を込めて立ち上がった。フラつきながら両手を高く挙げて勝利への強い意欲を、主審に、会場にアピールした。しかしダメージは深刻だ。試合が再開され、バルガスの攻撃にさらされると、最後は右が決まったところでストップとなった。8回までのスコアはジャッジ2人が三浦のリード。近年では記憶にないほどのショッキングな敗戦だった。
米国のリングでセミファイナルに抜擢!
今回、三浦に与えられたリングは、過去に日本人選手が経験した中で最高の舞台だったと言える。
この日のメインイベントは、ミゲール・コット(プエルトリコ)とサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)によるラスベガスのスター対決で、年間でも1、2を争うビッグマッチだった。
試合は米ケーブルテレビ局HBOでペイ・パー・ビュー(PPV)放送され、三浦の試合はそのセミファイナルで行われた。最近は米国のリングに上がる日本人選手も増えているが、PPVのしかもセミファイナルに抜擢されたのは三浦が初めてだ。
加えて対戦相手がメキシコのスター候補だったというところも見逃せない。現在、アメリカのボクシングの中心にいるのは、メキシコ系アメリカ人、あるいはメキシコ人だ。彼らは主要なファン層であり、主要な選手層でもある。つまりアメリカで成功したいなら、自らがメキシコ系であるか、あるいはメキシコ系に勝って名前を売るか、このどちらかが1つのポイントになる。
典型的な例がマニー・パッキャオ(フィリピン)だ。