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トリプルアクセル、休養からの復帰――。
伊藤みどりが語る、浅田真央の挑戦。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byAsami Enomoto
posted2015/11/19 11:20
伊藤みどりさんは1988年に女子として世界で初めてトリプルアクセルに成功。その美しく、高いジャンプは現在も賞賛され続けている。
伊藤さんが感じた、浅田選手の迷い。
その時まだ現役復帰を宣言する前だった浅田選手は、伊藤さんにこんな質問をしたという。
「どのような決心をして引退されたのですか?」
「引退発表してからまた現役をやりたいな、という思いは出ましたか?」
伊藤さんは「真央は現役か引退か、かなり迷っているんだ」と感じたという。そしてどちらの道に行くにしても幸せになって欲しいと願い、自分自身の経験も踏まえたある言葉を送った。
その言葉が何であったかは記事をお読みいただくとして、浅田選手はトークショーの1カ月後、「現役続行」を宣言する。その一報を聞いた時、伊藤さんの目には自然と涙があふれた。
「やりたいと思った時こそ、大きなチャンス」
「真央のチャレンジ精神は素晴らしいもの。やりたいと思った時こそ、大きなチャンスです。決断したからには、真央は迷わず強く進んでいけるでしょう」
伊藤さんはこうアドバイスを送る。そして休養後に復帰する選手の心理をこう表現した。
「試合ってとても緊張するけど、やり終えた時の達成感はアイスショーの数百倍。ベストコンディションに持っていくための過程はすごく苦しいけれど、試合でうまく演技ができた時に『ああ、私は生きているんだ』というのを感じる。真央も私もそういう達成感を味わいたいタイプのスケーター。真央の気持ちには本当に共感できます」
同じ名古屋で生まれ、「女子もトリプルアクセルが跳べる」ということをスケート界に知らしめた伊藤さんだからこそ語れる「新しい浅田真央」について、話は休養を経て生じた浅田選手の気持ちや滑りの変化、そして次のオリンピックまでにも及んだ。