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“王様”家長昭博が導いた優勝&昇格。
大宮アルディージャが1年で再びJ1へ!
posted2015/11/16 11:40
text by
粕川哲男Tetsuo Kasukawa
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
「よっ、王様!」
塩田仁史が、テレビ取材中の家長昭博を茶化していく。今季、FC東京から移籍してきた経験豊富なGKの突っ込みに、違和感はない。
J2第41節、J2残留が目標となっていた大分相手に2点のビハインドを負う苦しい展開。ムルジャの2ゴールでなんとか追いついて迎えた87分、劇的な逆転勝利につながるPKを決めたのは家長だった。ベンチへ向かってダッシュした殊勲の背番号41が、仲間たちと抱き合って喜ぶシーンは、今季の大宮を象徴していたような気がする。
目標のJ2優勝、そして1年でのJ1復帰を遂げた大宮にあった最大の強みは、ベンチを含めた一体感であり、その中心にいたのは間違いなくエースの家長だった。
家長が作った、チームとしての方向性。
手堅い守備でゲームの流れを引き寄せ、最終ラインからパスをつないで主導権を握り、両サイドのアタッカーと前線のストライカーが連係してフィニッシュまで持ち込む。今季、大宮が見せたそんなスタイルは、家長の存在抜きには成り立たなかった。
チームメイトは、金沢との開幕戦で右膝を痛めた家長が戻ってきた第7節の千葉戦のあたりから、「どんなサッカーを目指すのか、チームとしての方向性が見えてきた」と振り返る。
堅実な守備と積極的な攻撃参加が持ち味の左SB和田拓也は「アキくんがいる1.5列目の位置でボールが収まると、後ろから押し上げる時間もできるし、ボールを取られた後のマネジメントにも厚みが出る。アキくんがいてくれると、躊躇することなくポジションを上げることができる」と言い、CBやボランチで攻守をつないだ横山知伸は、「もしアキがいなかったら、たぶん、そこまでボールは回らない。縦にシンプルに蹴るような、もっと違うサッカーをしていたかもしれない」と分析する。
ボールポゼッション率を高め、主導権を握りながら勝利を目指す戦い方を貫けたのは、家長がいたから――。誰もが、そう信じて疑わない。