ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
村田諒太、ついに米リングで初勝利。
「最低の試合」か、意味あるデビューか。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2015/11/09 11:50
トップランク社と契約した際の目標は「3年、10戦で世界戦へ」。2016年でその3年だ。
層の厚いミドル級では、アメリカこそが本場。
そう、グッドではないが、オーケーなところはたくさんあった。左右のボディ打ち、特に左ボディブローは威力、タイミングともにデビュー当初より磨きがかかっているように見えた。ガードを高く掲げるがっちりとしたディフェンスは、フィジカルの強さに下支えされ、世界チャンピオンクラスを相手にしても大きな武器となるだろう。
グッドでなかったのは、低く攻めてくる相手に対処できなかったところ。もう少しキャリアを積んでいれば、と感じさせた。
村田は渡米前、この試合を「夢へのデビュー戦」と表現していた。ゆえに失望が大きかったのかもしれないが、今回の試合は文字通り、デビューしたことに最大の意味があった。今回の試合で村田の評価がアメリカで落ちたのかと言えば、まったく落ちてはいないだろう。なぜなら、まだ評価そのものがなされていないからである。
一般的に、日本のボクサーが本場アメリカで知られることは少ない。昨今はYouTubeなどで簡単に映像が見られるとはいえ、やはり生でその姿を見せないと、日本でどんなにいい試合をしても、現地のファン、関係者の心には届かないのだ。
ましてや村田は世界的に層の厚いミドル級で勝負を挑もうとしている。実力ナンバーワンと言われるカザフスタン出身のWBAスーパー王者、ゲンナジー・ゴロフキンをはじめ、このクラスの世界チャンピオンはすべてアメリカのリングに上がっている。村田もミドル級で勝負を挑み、スーパースターを目指す以上、彼らの土俵に上がり、米国でもまれ、評価されるということが、何より大事なのである。
同日、中量級でもう1人の日本人が名前を売った。
奇しくも村田がラスベガスで試合をした同じ日、フロリダ州マイアミで村田の東洋大の後輩である小原佳太(三迫)がIBF世界スーパーライト級王座挑戦者決定戦に出場した。結果は無情のドロー。しかし試合は小原が優勢で、実況アナウンサーは小原のファイトを何度もたたえ、判定には客席からブーイングも起きた。スーパーライト級も、日本人には縁遠い中量級のクラスで、いままで日本人が海外に出て試合をする機会はあまりなかった。不可解な引き分けだったとはいえ、今回の試合を通して小原の名前はアメリカで確実に浸透しただろう。やはり顔を見せることが重要なのだ。