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最終種目・鉄棒で内村航平が堂々金。
日本のお家芸「美しい体操」の復活。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byRyu Voelkel
posted2015/11/02 12:30
種目別・鉄棒で演技中の内村。個人総合決勝ではあえて使わなかったG難度の技「カッシーナ」も成功させている。
鉄棒で顕著だった、演技に対する厳格な評価。
今年10月に出された「警告」がどのケースを指すのかは明らかではない。しかし、FIGのブルーノ・グランディ会長が「体操はアクロバットではない。良い実施をすることが重要であり、芸術性が評価されるべきだ」と強調していることもあり、今年の世界選手権では演技の出来映えを示すEスコアの出方がかなり厳しかった。
特に鉄棒ではそれが顕著だった。
予選ではロンドン五輪金メダリストで、世界選手権でもこの種目2連覇中のエプケ・ゾンダーランド(オランダ)が、雑になってしまった部分を細かく減点されて点が伸びず、種目別決勝に進めなかった。
団体決勝では、昨年あれだけ高得点が出た中国選手が、姿勢の悪さや流れの停滞でしっかり減点されていた。
ここで浮上したのが日本だった。長い間、大事にしてきた「美しい体操」を武器に、Eスコアですべての上をいった。
そして、その象徴が内村だった。
「日本は世界一のチームである、僕は世界一の選手」
個人総合では、演技の難しさを示すDスコアを見れば、ライバルになると見られたオレグ・ベルニアエフ(ウクライナ)や、デン・シュウディ(中国)を下回ったが、Eスコアで全選手を上回った。
エースは大会終了後、こう言った。
「体操は美しくなければ周りに影響を与えることができないし、それは点数にも表れてくる部分だ。日本は世界一のチームであり、僕は世界一の選手でもある。自分が率先して美しい体操を見せていくべきだと思っているし、ここでそれを示すことができた」
今回の個人総合金メダルという成績により、日本体操協会は内村をリオ五輪代表に内定すると決めた。今後は来年8月の本番まで9カ月を掛けて、五輪の準備をしていくことになる。