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最終種目・鉄棒で内村航平が堂々金。
日本のお家芸「美しい体操」の復活。

posted2015/11/02 12:30

 
最終種目・鉄棒で内村航平が堂々金。日本のお家芸「美しい体操」の復活。<Number Web> photograph by Ryu Voelkel

種目別・鉄棒で演技中の内村。個人総合決勝ではあえて使わなかったG難度の技「カッシーナ」も成功させている。

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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Ryu Voelkel

 取るべくして取った。勝つべくして勝った。裏付けがあり、伏線もあった。

 10月23日から11月1日まで英国グラスゴーで行なわれた体操世界選手権で、内村航平(コナミスポーツクラブ)は団体、個人総合で金メダルに輝いた。

 さらに、最終種目となった種目別鉄棒でも圧倒的な演技を見せて金。

 またしても世界に強さを見せつけた。

 内村は今大会で3冠に輝き、世界選手権での金メダル数は日本選手で史上最多の10個となった。五輪を含めた世界大会の通算メダル数は24で、こちらは監物永三に並んだ。

 次から次へと記録を塗り替える技術の高さ、情熱の深さは異次元と言っていいレベルだ。

 けれども、団体金メダルを初めて手にしたことを除けば、成績については淡々としていた。

「団体は狙いに行ったけど、個人総合と種目別は自分の演技ができた結果。出た種目すべて金メダルというのは初めてなので、それに関しては運が良かったと思う」

 ただ、運をつかむための裏付けはあったと考えている。内村は、「それだけ練習をやっているということを証明できたと思う」と胸を張った。

 そして、結果よりもうれしいことがあるのだと饒舌に語った。

「種目別鉄棒は、予選からここまで自分の演技ができていなかったので、最後の最後にそれができて良かった」

 内村は満足そうだった。

昨年の世界選手権での“いびつな採点”に警告が!!

 団体、個人総合、鉄棒の演技で受けた“正当評価”には、伏線があった。

 今大会前の10月6日、国際体操連盟(FIG)の規律委員会は、昨秋に中国・南寧で開催された世界選手権の採点について、7人の審判員(男子審判5人、女子審判2人)に、基準の一定しない、いびつな採点があったということで、「警告」を与えた。

 審判員の名前や具体的な事例については述べられていないが、FIGの狙いが「今度の世界選手権ではしっかりと、正確なジャッジをしなさい」という、全審判員への意識付けにあったのは間違いない。

 思えば昨年は、日本と中国の一騎打ちとなった男子団体決勝の終盤2種目で中国の選手に次々と高い点が出された。その結果、最後の鉄棒で日本は中国に逆転を許し、「0.1点差」の銀メダルに終わっている。

【次ページ】 鉄棒で顕著だった、演技に対する厳格な評価。

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