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19年ぶりに中学生が日本新記録!
15歳・池江璃花子は水泳女子の希望。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2015/11/01 11:00
池江(左)は、8月の世界水泳200mバタフライで金メダルの星奈津美(右)を破っての日本新記録だった。
記録的には五輪派遣標準も既に突破済み。
加えて、結果を残すとともに少しずつ舞台が大きくなることで、目標を高く持つようになった。それはときに悔しさにもつながった。
例えば、3位に入って世界選手権代表入りを決めた日本選手権の200m自由形の後は、涙が止まらなかった。ライバル視している1学年上の持田早智が2位であったこと、個人種目で代表に選ばれなかったことが理由だった。
そうした悔しさもばねになり、決して練習好きではなかったという姿勢も最近は変わってきた。高い技術に加え、気持ちも加わっての、今回の日本新記録だった。
「後半はきつかったです」
そうレースを振り返った池江だが、それでも最後まで持ちこたえたのは、ワールドカップ前のグアム合宿でスタミナを鍛えた効果であり、取り組み方の変化でもある。
今回のワールドカップでの優勝タイムは、来年のリオデジャネイロ五輪の派遣標準記録57秒77をクリアするものでもある。競泳の代表選手選考は、来年4月の日本選手権での派遣標準記録突破と決勝で2位以内になることが条件であるため、今回の突破がそのまま代表選考に直結するものではない。それでも、ここで選考基準で設定されているクリアするタイムを出せたのは、自信になったことだろう。
メダルは目立っても、女子の地盤沈下は深刻。
そして池江の成長は、競泳界にとっても意味がある。今年の世界選手権では、渡部香生子、星奈津美が金メダルを獲得したことで、一見女子の活躍が目立つ大会だった。だが、個人種目での代表選出者は、男子が9名いたのに対し、女子はわずか4名に過ぎない。全体として、選考基準を突破して個人種目で代表に入るだけの実力ある選手が女子は少なくなっている現状があり、危機感は共有されている。そういう点も、池江に期待が寄せられる背景である。
池江に限らず、現在の中学生世代には将来を期待される選手が数名、出てきている。池江の活躍を刺激として、それを励みにさらに台頭する選手が出てくれば、女子全体の底上げにつながる。
池江のこれからとともに、女子の若手の今後もまた、リオデジャネイロ五輪そして東京五輪の日本競泳界へとつながっているのである。