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岩田寛は米ツアーで絶対愛される!
一途でエモーショナルな個性派。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2015/10/06 10:45
ツアーカードを遂に手にした岩田寛だが、「不安の方が大きい」と意外な言葉を発していた。
すでに声をかけてくれるファンがいる。
一途でひたむきだけど、その一方で、冷静に自分を見つめることができるのは岩田の強味だ。飄々としている一方で、これから足を踏み入れる新世界には熱い想いを膨らませている。自分で道を切り開き、新世界へ飛び込んでいこうという意欲は岩田の武器になる。
「愛されたいです。まずは英語がしゃべれるようになりたい。英語でスピーチもしたい。友達もいっぱい作りたい」
その気持ちは、視線や表情、態度を通して周囲に伝わるのだろう。同組でプレーした選手やキャディ、眺めていたギャラリー。すでに声をかけてくるファンが生まれつつある。
「あっ、ローシだろ? 一緒に写真撮ってもいい? ローシの大ファンになったんだ。ところで、名前の発音、ローシでいいのかい?」
「ヒロシ」が発音できず、何度教えても「ローシ」になってしまったノリのいい黒人男性に声をかけられ、岩田は「イエス」と立ち上がり、笑顔で記念写真に収まり、握手を交わした。米ツアー選手になり、米国に自分のファンが生まれ、英語で対応しているその状況。岩田は、うれしそうだった。
胸に秘めた岡本太郎の言葉。
だが、そのあと彼はこんな一言も。
「丸山(茂樹)さんが言ってたんですけど、英語ができると1試合で1打は違うって」
なるほど。英語はコミュニケーションのためのみならず、「1試合で1打」のためでもあるということ。プロとしての向上心や欲は常に併せ持つ。それは岩田の基本姿勢だ。
感情の起伏の抑制を課題に掲げているのだから、「試しにメンタルトレーニングとか、受けてみる気はある?」と尋ねてみた。
「興味はあります。トライしてみようかなとも思う。でも、岡本太郎が言ってたんですけど、人に頼ると土壇場でその人が出てくるって。僕は土壇場で自分に出てきてほしい」
エモーショナルで一途でひたむき。それでいて、クールで博識で、こだわり部分は簡単には譲らない。
アメリカは「一生懸命」と「らしさ」が大好き。個性派のヒロシ・イワタは、きっと米ツアーで愛される。