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ACLで韓国勢を打倒してきたガンバ。
超リッチな広州恒大とどう戦う?
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byGetty Images
posted2015/09/25 16:00
全北現代を破った試合でのキャプテン倉田秋と長谷川健太監督。
2014年に生まれ変わった城南FC。
城南は、2014年の国内カップ戦で「超守備的戦術」を敷いて、ビッグクラブの全北、ソウルをそれぞれ準決勝(10月22日)と決勝(11月23日)で破り、2015年ACLの出場権を得た。いずれもPK戦での勝利だった。
チームを率いるキム・ハクボム監督の戦略によるものだった。
かつて「城南一和」としてACLで2度の優勝を誇ったチームは、2013年シーズンを最後に統一教会グループが経営から撤退。2014年から市民クラブ「城南FC」として運営は引き継がれたが、かつて「韓国版ギャラクティコ」と呼ばれたチームとは程遠い、地味な選手構成で再出発を余儀なくされた。おまけにこの年の4月、初代監督が選手への体罰により辞任するという事態も起きた。昨年9月に監督に就任したキムは言う。
「就任当初、選手たちは60分しか走れない状態だった。『それでもプロか?』と問い、まずは体力トレーニングから課した」
選手に報奨金のボーナス、大物選手の獲得……。
国内カップ戦での徹底した戦い方で結果を得たの、「次の手」も徹底していた。
優勝とACL出場権獲得のボーナスとして、クラブのオーナーである城南市長から約1億5000万円の選手強化費のアップを勝ち取った。
この資金を使い、クラブは「ほぼ一点買い」に出る。サムスン系のビッグクラブ、水原の超大物MF、キム・ドゥヒョンを引き抜いたのだ。同選手はかつて城南一和に所属した縁もあったが、交渉はシンプルだったと言われる。城南が、水原を上回る年俸を提示したのだ。
かくして迎えた2015年のACLでは、中盤に絶対的なエースを置き、あとは守備的に戦うやり方を継続した。
先に紹介した5月20日の広州恒大戦では、そのキムが真価を発揮した。前半22分、ペナルティエリア中央でボールを受け、右サイドに流れたブラジル人ジョルジーニョに柔らかいパスを通した。この先制点で相手の焦りを誘った。42分に同点に追いつかれるものの、後半19分に広州DFが城南選手の体を蹴るファウルで退場し、数的優位を得た。ここから城南は攻撃的な布陣にシフトし、徐々に反撃に出る。アディショナルタイムに得たPKをキム・ドゥヒョンがゴール左隅に決め、奇跡的な勝利を挙げたのだった。