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「新チーム美香」を結成した宮里美香。
専属キャディー&トレーナーの秘密。
text by
小林由加Yuka Kobayashi
photograph byShizuka Minami
posted2015/09/18 10:45
ヤーデージブック片手に宮里に付きそう加藤。宮里の手には今季から使い始めたパターが。
いかにして、シーズン中の調子の波を抑えるか?
加藤が宮里と時間を共にして感じたのは「出会った選手の中で『一番の天才』。ゴルフに対する迷いが一切ない」ということ。
その言葉を裏付けるかのようにプレー中、宮里は自分のテンポを一切変えない。ミスショット後など、打球の確認で足早になる選手が多いが、どんなショットの後でも球へとゆっくりと足を進め、そのままスッと打つ姿が印象的だ。
ゴルフはコースによって得意不得意があり、さらに芝の状態、天候、他の選手の調子など、多くの要因が複雑に絡み合ってスコアに影響する競技である。だから、全試合で勝とうとすると、かえって結果が残せないものなのだという。
シーズンを通して平均的に良い状態をキープし、本当のチャンスを迎えた時に、しっかりと実力を発揮して戦えるのがトッププレーヤーなのだと、彼らは声をそろえる。
正確なショットを取り戻す
彼らがまずとりかかったのは、宮里の身体を鍛え直し、正確なショットを取り戻すことだった。
「ティーショットからグリーンにたどり着くまで、去年だと右に外すことが多かったんです」と加藤。安定したショットが強みだったはずの宮里だが、昨年はフェアウェイキープ率がピーク時より10%近く低下していた。コンディションが悪くなり体幹が弱まると身体が起き気味になり、股関節も使えないままにクラブが遅れ、打球が右へ飛ぶ傾向が強くなるのだという。
今年1月、工藤が初めて宮里のスイングを見た時にも「柔軟性はすごくあるが、右足の股関節が上手く使えていないため、力が右側に逃げてしまっている」とすぐに気付いたという。
そこで工藤が取り組んだのは、数百種類もレパートリーの中から腹筋と右足の股関節を使えるようにするためプログラムだった。太ももの筋力強化、股関節の柔軟性アップと可動域の拡大に重点を置いたトレーニングである。
さらに、基礎体力のアップと日々の体調のバロメーターにするために、ランニングも導入。これまで定期的な走り込みをしていなかった宮里だが、今では週に複数回の走り込みをするのがルーティンとなっている。この時のタイムと疲労度で、その週の身体の調子を工藤が確認するのだ。
ラウンド前やドライビングレンジでの練習直前に行う下半身強化のスクワットなど10種類ほどのトレーニングは、シーズンを通してあえて同じメニューにしてある。この決まったメニューをこなすことで当日の変化を読み取り、ラウンド前に工藤から加藤に今日はどんな球が出やすいかが伝えられ、コースマネージメントに反映させられているのだ。
逆に、ラウンドが終わると加藤がコースでの宮里の状態を詳細に工藤に伝え、トレーニングでどう修正、改良できるかを工藤が考える。そして、工藤は毎日行うケアで気付いた身体の変化を再び加藤に伝える……。
「トレーニングが嫌いなので最初は大変でした」と宮里は冗談混じりの本音を漏らしたが、1月に行われたフロリダ合宿から始めたトレーニングの効果はすぐ現れたのだそうだ。