サッカーの尻尾BACK NUMBER
C・ロナウドはロナウドになる!?
30歳を越えて激変したスタイル。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2015/09/14 11:50
今季はプレシーズンを含めるとクラブで7試合、代表チームで2試合の合計9試合で無得点が続いていたロナウド。1試合5得点はまさに“ケチャップ”並の出方ではある。
ボールアーティストとしてのピークはマンU時代。
思えばウインガーとしてのロナウド、ボールアーティストとしてのロナウドの全盛期はマンチェスター・U時代だった。
シザーズやエラシコ、ヒールや軸足の裏を通すプレーなど、あらゆるトリックをどこか得意げに披露する、華麗なドリブラーだった。
しかしそんな姿はもう見られない。ドリブル、フェイントを見せるにしても、今はシンプルでほとんど時間をかけないものだ。
プレーエリアも大きく変わった。いまだにロナウドのことを「エクストレモ」、ウイングと表記することが多いが、今となっては左サイドに張っていることの方が珍しい。「偽9番」という言葉が流行したが、今のロナウドは「偽ウイング」とでも呼ぶべきだ。
5点を決めたエスパニョール戦でも、サイドでの1対1で相手にドリブルでしかけチャンスを作るシーンは皆無で、目立ったのはパスを受けネットを揺らす、生粋の9番的ストライカーの姿だ。
30歳になって、スタイルを変化させた?
昨季のデータを見てみる。
ロナウドは昨季通算61点を決めたが、エリア外から決めたのは5点だけだ。ペナルティエリア内での得点が43点、その内14点はゴール目前のゴールエリアから決めたものだ(13点がPK)。
ワンタッチゴールの数と頭での得点数も、ストライカーの毛色を濃くしている。
昨季ワンタッチで押し込んだゴールは38点にのぼり、総得点の62.3%を占める。頭では17点を決めた。ドリブルで数人をかわして決める、というようなゴールはほとんどない。先日のエスパニョール戦の5点も、3点がゴール前でワンタッチで押し込んだものだ。
ロナウドは今年30歳を迎えた。今の所スピードや筋力に衰えは窺えないが、今後は緩やかに低下するのは避けられない。ドリブラー的な色が薄くなり始めたのは、20代後半に入ってからだ。キャリア終盤のことを考えてのスタイル変化だとしたら、非常に賢い選択だったといえる。