サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
万能型が揃う代表に“一芸”で挑む。
永井謙佑にハリルが期待すること。
posted2015/09/02 11:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Takuya Sugiyama
『足が速い、では通用しない。
足がめちゃくちゃ速くないと、この世界では生き残れないんだなと実感した。
~中略~
自分の能力をサッカーにどう生かすか?
足が速いならどの場面で使うか?
そのためには必要なサッカーの技術も身につけなきゃいけない!』
これは先日イングランド・プレミアリーグで開幕デビューを飾った岡崎慎司が自身のフェイスブックで綴ったメッセージだ。アフリカ系の選手も多いチームのなかで、「わかりやすい武器がない」ことのアピールの難しさを語り、「飛び抜けた特徴を持った選手には、それに満足せず、それを世界で圧倒する物にして欲しい」という想いをこめている。
欧州でプレーする日本人選手は、その万能性を評価されるケースが多い。一芸に秀でた選手が揃う欧州では、その万能性がひとつの武器になるのだろう。チーム状況に応じて指揮官の注文に応えるために工夫し、考えながら、岡崎もまた生き残ってきた。けれど、生まれ持った速さや高さで容易に決定的な仕事をしてしまう選手のインパクトは強烈だ。
同時に、万能性を求める傾向の強い選手育成の結果、日本代表には似たような選手が揃ってしまう傾向にある。そういうグループのなかに「飛び抜けた個性」を持つ選手がいれば、強力な武器になるという想いも岡崎にはあるのだろう。
コートジボワールのDFをちぎった永井謙佑の速さ。
今、日本で“めちゃくちゃ速い”と言えるのは、永井謙佑だろう。
2010年6月4日。スイス・シオンで行われたワールドカップ南アフリカ大会前のコートジボワールとの親善試合。前後半では0-2と敗れた日本だったが、控え組を中心に行われた練習試合では、1-0と勝利している。そのゴールを決めたのが、サポートメンバーとしてチームに帯同していた永井だった。
高めに設定された相手のDFラインの裏を駆け抜ける。そのスピードに、身体能力で勝るはずのコートジボワールの選手たちも対応できなかった。そして、ロンドン五輪でもその俊足を武器に輝いた。